投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【1/17-/1/21週の世界のリスクと経済指標】〜崩れた逆相関〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -4点(56点):悪化 (基準点60点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化としました。

中国当局は、2月に開催する北京五輪に向け、参加選手のウイグルなどの人権問題への言及を処分の対象とすることを示唆し、言論統制を強める方針としています。

北京市内でのオミクロン株感染も確認され「ゼロコロナ」政策が展開される中、欧米諸国の外交的ボイコットや言論統制も加わり、2008年の前回北京五輪とは全く違った雰囲気での開催となりそうです。

 

 欧州情勢では、バイデン大統領は露がウクライナを侵攻するだろうと述べ、侵攻の際には露の銀行との米ドル取引を停止する方針を示しました。

また米国は露のNATO東方拡大停止要求に対してそれを固辞し、代わりに軍事演習制限を提示する方針としています。

恐らく露はその提案を拒否すると思われるため協議は平行線を辿り、不安定な状況が継続すると思われます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス4ポイントの悪化となりました。

中国の10-12月期GDPは予想3.7%は上回ったものの前回の4.9%より大幅に減少した4.0%となり、不動産に対する規制や強いコロナ規制により中国経済の成長が鈍化していることが示されました。

その一方で中国人民銀行政策金利に当たるLPRを0.1%引き下げ3.7%とし、緩和することを発表しました。

世界がインフレ対策から利上げ傾向となる中での金融緩和は異質で、中国のインフレ率が今後どうなっていくのか注目が集まります。

 

次週は1月の米FOMCがあります。

3月に始まるとされている今年の利上げペース(3回か4回)とQTの開始時期に関してどのような言及を行い、インフレに対するFRBの焦りをどこまで見せるのか注目したいと思います。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週は米株指数が大幅に反落しました。

前週はボラタイルながら何とか小幅下落で耐えていましたが、先週は米国の休場明けの1/18から、ハイテク株(ナスダック)、小型株(Russel2000)を中心に堰を切ったかのように下落しました。

欧州株や日経平均も下落はしていますが米国株と比較すると小幅な動きとなり、バリュエーションの高い米国株を中心にマネーが流出したことが示されました。

 

また、一方で中国は世界の潮流に逆らいLPRを0.1%利下げしたことで上海総合指数や香港ハンセン指数は反発しました。中央銀行の引き締め、緩和の政策の違いによってはっきりと明暗が分かれました。

 

 

〜崩れた逆相関〜

 さて、先週は米国株式に大幅調整が起こり、QT議論を示した1/5の12月FOMC議事要旨の発表を境に、マーケットが転換したことが明確に示されました。

私は10月以降、折りを見て米国債イールドカーブの動きを見ながら、債券市場がマーケットをどのように捉えているかを確認し指標としてきました。

下記はS&P500米国債の長短金利差(30年債利回りー2年債利回り)のチャートを重ねたものです。

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この青色線の米国債の長短金利差は縮小して低下するほどフラットニング、上昇し拡大するほどスティープニングとなります。

スティープニング長期金利の上昇によって将来の景気回復を意味しますが、フラットニングは足元の短期金利が利上げ観測により強く上昇しながらも、将来の景気減速を織り込んで長期金利の伸びが鈍化することを意味します。

 

長短金利差は21年3月頃をピークに縮小トレンドにありましたが、特に10月からは急速に利上げ観測を強めフラットニングを強めてきました。

一方でそれと同時期からS&P500は逆に拡大傾向を強め、インフレは一時的であり業績相場に移行すると楽観し、1/3にピークをつけるまで約11%上昇しました。

 

それが1/5を境に、長短金利差もS&P500も両方とも下方向へ動き、逆相関が順相関に変わりました。

利上げだけでなく投資家の予想を超えてQTまで議論されていたことが判明し、FRBの焦りに対して株式市場でも反応が示された形となりました。

この3ヶ月間、イールドカーブを見続けてきた中で逆相関には違和感がありましたが、株式市場が見ていた楽観が行き過ぎたものであり、債券市場が見ていた悲観が正しかったことが証明されました。

 

これらのことから、やはり債券市場の動きはとても重要で、特にインフレの高まりから利上げ観測が出るタイミングでのイールドカーブの動きには注意を払う必要があると感じています。

 

この先、先週のように大幅な下げが続くのかはわかりませんが、まだ米国株はバリエーションが高い水準であるため、実際に利上げが始まってすらいない現状では少なくともまだ買い向かえる状況ではないと思います。

 

引き続き弱気のスタンスを維持しつつ、日々のニュースを追いかけながら次の買い場が来るのを待ちたいと思います。

 

以上

【1/10-1/14週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -8点(42点):大幅悪化 (基準点50点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化でした。

新型コロナのオミクロン株の拡大は依然勢いが強いものの、英国や米NY州などは既にピークアウトの兆しが見られ、収束も早い可能性が出てきており、近い将来に再び景気回復が強まる期待も高まりました。

 

ウクライナを巡りロシアとの緊迫が高まる欧州では、ロシアが提案する新たな欧州安保案に関してNATOとロシアによる協議が行われましたが溝は埋まらず対立解消への進展は見られませんでした。引き続き協議を継続すると擦るものの、進展しないことを理由にロシアがウクライナ侵攻を仕掛ける懸念も生まれており注意が必要です。

天然ガスの主要産出国であるロシアとの対立が深まれば、欧州を中心に資源需給にも混乱が生まれることが予想されます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス8ポイントの大幅悪化となりました。

中国のCPI、PPIは高水準であるもののやや落ち着きを見せ始めており、インフレのピークアウトの兆しが見え始めました。

 

一方で米国CPIは依然上昇を続けており、インフレが長引いていることを示しました。

また、インフレによる市民の苦しい生活を反映してか、12月小売売上高や1月ミシガン大学消費者態度指数などの消費者需要を測る指標が予想に反して低調に推移しました。

小売売上高に関しては、昨年のクリスマス商戦が品不足懸念で前倒しで購買されていたために下がった可能性もありますが、年末商戦の数値が落ちたことは非常に気掛かりです。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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先週の株式指数は主要先進国指数は激しいボラティリティの中、週を通して見るとやや下落となりました。

特にナスダックの動きが激しく、1/10には一時3.6%安となるものの、その後戻しプラ転するなど、大きく上下することもありました。

利上げ観測が強まる中、既に崩れている小型ハイテク株に続いてGAFAMなどの大型ハイテク株もボラタイルな動きの中で徐々に崩れてきた印象です。

 

新興国株式としては、資源高を背景にブラジルボベスパ指数は反発しましたが、前週に続きロシアRTS指数はウクライナ侵攻やカザフスタンの動乱を巡ってリスク回避で大幅反落となりました。

 

 

スティープニングしないイールドカーブ

さて、私は前週にQT議論が出たことによってイールドカーブスティープニングするのではないかと予想していましたが、先週は一転フラットニング傾向が強くなりました。

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これは12日に発表された米CPIで予想に一致したものの7%という高い数値が出たことや、先週、パウエル議長、ブレイナード理事への議会公聴会を始め、多くのFRB高官がタカ派発言を行ったことが影響していると思われます。

 

下記に発言内容をまとめています。

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 先週はボウマン理事以外の全てのFRBメンバー14人が発言していますが、その全てが利上げについて発言しています。

これにより、ほぼ3月FOMCでの利上げが地固めされたことが認識できますが、さらに今年の利上げ回数4回以上とするメンバーが14人中5人、そしてBS縮小(QT)にまで踏み込んだメンバーも14人中4人いました。

また従来強いハト派であるシカゴ連銀のエバンス総裁さえも今年の4回の利上げおよびQTへ言及しています。

これらのことから、FRB当局者の目標が完全に雇用対策からインフレ対策に変わり、さらに前のめりとなっていることがわかります。

 

イールドカーブフラットニングの動きは、これらのFRB高官の相次ぐタカ派発言で足元の利上げが強く意識され、短い年限の金利が上昇したことが伺えます。

 

一方で長期金利の反応は鈍く、ウィリアムズNY連銀総裁が「BS縮小は長期金利の上昇に寄与する」とQTの目的をスティープニングであると明言していましたが、あまり大きな動きは見られませんでした。

FRBはQTを使うことによって長短金利差の縮小を抑えようとしていると思いますが、今のところはタカ派への急転換が強すぎるだけに、引き締めへの焦りを示すだけになってしまっている印象です。

 

また先週発表された12月小売売上高、ミシガン大学消費者態度指数が低調に推移しインフレの影響による消費の停滞が見られたことから、スタグフレーションの可能性も意識され、将来の景気を表す長期金利が上昇しにくくなっているのかも知れません。

 

私は先週、バリューへのセクターローテーションの中で、イールドカーブスティープニングを予想し銀行株への投資を検討していましたが、上記の通り想定通りの動きが見られなさそうであるため一旦銀行株投資は取りやめとしました。

 

一方で、先週は主要国でのオミクロン株拡大のピークアウトの兆しが見られたことや、産油国カザフスタンの混乱や、ウクライナを巡るNATOとロシアの対立など地政学的なリスクから原油が上昇し直近高値圏まで高騰しました。

そのためバリューの中でもより直接的なインフレの影響が大きく、テクニカル的にも新高値更新しているエネルギーセクターとして日本の総合商社の個別株にインフレヘッジとして投資を行いました。

 

全体としては株式30%のポートフォリオで弱気継続ながらも、大型ハイテク株の影響の大きい株式指数の停滞を補うべく5%の個別株を組み入れた形となります。

 

以上

【1/3-1/7週の世界のリスクと経済指標】〜QTによるイールドカーブの変化の兆し?〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(36点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(114点):良化 (基準点105点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

オミクロン株は重症化率は低いものの、高い感染率により企業や公共サービスの担い手が大量に隔離されることで新たな供給制約につながる可能性が懸念されます。一方でコロナとの共存政策をとる英国では、新規感染者数がピークから2割減少しピークアウトが鮮明となってきました。南アフリカ同様、感染スピードが早い分ピークアウトも早い傾向も出てきました。

 

地政学リスクでは、ロシアからのNATOの拡大停止を求める欧州安保案を拒否する構えを打ち出しました。ウクライナ国境付近ではまだ10万人規模の露軍が展開していると見られ、さらに先週は燃料価格高騰によるデモ鎮圧のためにカザフスタン内にCSTOとして露軍が展開を始めています。

旧ソ連圏を中心に欧州での露軍の展開が加速しており、12日のロシアとNATOとの会合の結果如何では新たな展開も考えられるため注意が必要となっています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの良化となりました。

先週は、指標でありませんが12月FOMCの議事要旨が発表され、テーパリングの加速および22年の3回の利上げと共にQTまで議論されていたことが判明し、予想以上にFRB当局者の考えがタカ派に振れていることを示しました。

またその後の米雇用統計で、非農業部門雇用者数変化が予想400Kに対して190Kと届かずも、失業率は予想4.1%に対して3.9%、平均時給は予想0.4%に対して0.6%となり、雇用の逼迫し完全雇用に近い状態であることを示し、FRBタカ派を正当化しました。

 

次週は米12月CPIの発表に注目します。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価は米長期金利の上昇やFRBのQT議論を受け、バリュエーションの高いナスダックが大きく下落しました。一方でFOMC議事要旨発表前の週前半に大きく上昇していたこともあり、ダウ平均、欧州株指数、日経平均への週を通しての影響は限定的でした。

またロシアRTS指数は、原油価格上昇が追い風にならず、ウクライナ侵攻リスクやカザフスタンでの騒乱を受け、リスク回避の動きが高まり大きく下落しました。

 

 

〜QTによるイールドカーブの変化の兆し?〜

 12月FOMC議事要旨でテーパリングの加速、22年の利上げ回数3回の見通しだけではなくQT(量的引き締め)まで議論されたことが明らかになり、マーケットが想定していたよりもFRB当局者がタカ派となっていることが示されました。

それに伴い利上げが意識されやすい短い年限の利回りが強く上昇しフラットニングしました。

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また金曜日の1月雇用統計では、失業率、平均時給が大きく改善し完全雇用状態と共に賃金インフレが続いていることを示され、FRBタカ派傾倒が正当化されました。

しかし、それに伴いこの日は2年債利回りはやや低下しながらも、中長期の年限の利回りを中心に上昇しスティープニングしました。

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QTに関しては、過剰流動性を直接的に低下させてマーケットを冷やすと同時に、12月にFRBのウォラー理事が発言していた様に利上げと併用されることによって利上げペースを緩める効果があると考えられます。

またそれによってイールドカーブフラットニングを抑え、将来的な景気を冷え込ませないというFRBの狙いもあると考えます。

そのため、雇用統計の結果で上昇するかと思われた2年債利回りの低下は、QTによる効果を早速反映した可能性があると思います。

 

週を通しても、ややベアスティープニング傾向となりました。

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 利上げに加え、QTも想定されるとなると資金の流動性は低下し、これまでの様な何でも買われるカネ余り相場は終焉することを意味します。

今後、インフレ指標が落ち着かない限りは長期金利はさらに上昇すると思われ、QEによる過剰流動性で膨れ上がったハイグロ株などのリスク資産にとっては向かい風となることが予想されます。

また、S&P500、MSCIコクサイなどのインデックス指数も、加重平均のため割合の大きいハイグロ株の影響を受けやすく、今後じわじわ調整が続く可能性が高いと考えます。

 

 一方で先週はグロース株の多いセクターは下落する一方、素材、金融、エネルギーなどのシクリカルセクターの下落は限定的、もしくは上昇しておりセクターローテーションしたとも言えます。

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先述の通り、FRBのQTの狙いの一つがイールドカーブスティープニングであるならば、長短金利差で稼ぐ銀行株にはより有利となると思います。

 

先週、金利の急上昇を受けて長期投資ポートフォリオMSCIコクサイの割合を30%から25%に減らしましたが、今後のイールドカーブの動向を確認しながら、減らした5%分での個別銀行株への投資を検討したいと思います。

また1/14から銀行株の決算発表が始まりますが、金利がやや上昇傾向にあった4Qでの業績内容にも注目したいと思います。

 

以上

【12/27-12/31週の世界のリスクと経済指標】〜2021年の振り返り〜

先週の評点:

 

リスク   0点(36点): 中立 (基準点36点) 

経済指標  +6点(24点):良化 (基準点18点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはゼロの中立となりました。

新型コロナはオミクロン株の拡大が続き、米国では一日当たりの新規感染者数が50万人を超え、過去最多となりました。重症者数や死者数は2021年頭の過去の波ほどは増加していませんが、急速な感染拡大により公共交通機関などにも影響が出ています。

また、1300万人が住む中国西安でも感染者増加によりロックダウンが行われており、経済活動が制限されていることから今後再び供給制約につながる可能性があります。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス6ポイントの良化となりました。

年末ということもあり、重要指標はありませんでした。

 

 

【2021年の振り返り】

新年明けましておめでとうございます。

新年が始まりましたので、改めて2021年の振り返りをしてみたいと思います。

 

まず株価指数です。

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今年最も上昇が目立ったのは米株3指数で、S&P500が26.8%、ナスダックが21.39%、ダウ平均が18.73%と上昇し、米株の強さを印象付けました。

次いで欧州株価指数の独DAX、英FTSE100、露RTSが15%前後の上昇で続きました。

アジア株は日経が4.91%、上海総合が4.8%、香港ハンセンが-14%と振るいませんでした。

 

次に米バンガードによるセクターETF価格の騰落率からセクターの動きを見てみます。

参考までに2020年の年間騰落率も合わせて表記しています。

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ベンチマークである全米株式ETF(VTI)は2021年に24%伸びました。

それに対して目立ってアウトパフォームしたのはエネルギーセクター、不動産セクター、金融セクターとなりました。これらのセクターはコロナショックによる景気後退の影響が強く、20年は大きくマイナスとなりアンダーパフォームしていましたが、一転して21年は強い回復を見せました。

背景としては先進国でのワクチン接種の普及による急速な景気回復がありますが、そこからの影響で①エネルギー需要急増でエネルギーセクター、②住宅需要増+インフレヘッジで不動産セクター、③長期金利上昇で金融セクター、が強かったと考えられます。

 

一方で、昨年大きくアウトパフォームしていた一般消費財(AMZN、ホームデポ、MCDなど)がインフレによるコスト増の影響を受けてか、昨年ほどのパフォーマンスを示しませんでした。

株式は21年に大きく伸びましたが、その内容を見てみると最終的に「景気回復」→「インフレ」という流れに強いセクターが優位であったと言えます。

 

次に米国債金利です。

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上記は米国債イールドカーブの2020年末、2021年1Q末・2Q末・3Q末・4Q末の推移です。

20年1Q末には景気回復を織り込んで長い年限の金利が上昇し綺麗にスティープニングしていました。

しかし、1Q末をピークに徐々にインフレが意識され始めたことから21年末にかけてフラットニングが顕著となりました。

短い金利FRBの利上げを織り込み上昇しながらも、長い金利は将来の景気減速を織り込んで低下が見られ、インフレ高進→利上げ加速→景気減速が意識されました。

 

総じて見ると、やはりこの1年は景気回復→インフレという動きが強く意識された年でした。

米国では3月以降2%を超えるCPIが続き、12月には6.8%まで上昇しています。

22年はその過熱したインフレに対してそれをどう抑制していくかが試される年になります。

利上げによりインフレがうまく抑制されれば業績相場に移行する可能性もありますが、スタグフレーションになる可能性もあります。

実際にインフレ指標が落ち着きを確認できるまでは警戒を緩めず、株式30%の弱気ポートフォリオで新年をスタートしたいと思います。

 

尚、2021年の私の個人資産の運用成績は+14.58%となり、長期投資として非常に満足の行く成果を得ることができました。

 

本年も宜しくお願い致します。

 

以上

【12/13-12/17週の世界のリスクと経済指標】〜分かれる金融政策と難しいECBの状況〜

先週の評点:

 

リスク   -2点(34点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  -15点(114点):大幅悪化 (基準点129点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス2ポイントの悪化となりました。

元々拡がりを見せていたデルタ株にオミクロン株の強い感染力も加わり、欧米を中心に新型コロナの拡大が強まりました。英国では過去最多の9.3万人が感染し、米NY州でも2.2万人を超え、イベントのキャンセルが相次いでいます。ワクチン接種の拡大で重症化は抑えられているものの、オランダでは全国規模のロックダウンの開始が発表されており、この先他国も行動制限に追随するか注意が必要です。

 

ウクライナを巡る情勢では、米政権が独露のノルドストリーム2の稼働を阻止することも辞さないとの方針を示し、欧州のエネルギー問題にも発展してきました。

また、それに対しロシア外務省は米欧との緊張緩和に向け、NATOの拡大停止要求を盛り込んだ新たな安全保障案を公表しました。米欧は協議し、次週内には何らかの返答をするとしていますが、事実上の東欧からの軍事撤収もなども含まれており、協議は難航しそうです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

先週は多くの指標の発表がありましたが、注目は米FRBの金融政策発表でした。

FOMC後の声明では①テーパリング早期終了への加速、②22年3回、23年3回、24年2回の利上げ見通しが示されました。

11/30のパウエル議長発言にて既にFRBタカ派に政策転換することは示されていましたが、利上げ見通しはよりタカ派となった印象です。

FRBが強いインフレ継続の可能性を認識し、その対抗策の準備を急ぎ始めた重要な転換点となりました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

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 先週の株価指数は全体的に反落となりました。

米株指数は米FOMCを前に持高調整でハイテク株中心に反落、FOMC直後にはイベント通過の安堵感からかハイテク株が大幅反発しましたが、その後再び失速し大幅反落とボラティリティの激しい週となりました。

一方でFOMC直前の12/14から12/17の値動きで見れば、ダウ平均は0.5%安、S&P500は0.29%安、ナスダックは0.45%安と小幅な下落に留まっており、今の所は引き締めによる影響は限定的で不透明感が払拭されたことの安心感の方が勝っているような印象です。

とは言えこの週末にオミクロン株の拡大が顕著になった事もあり、引き締め政策と相まって次週もハイテク、シクリカル共に株式には重い展開となることが予想されます。

 

 

〜分かれる金融政策と難しいECBの状況〜

 先週は米FRB、英BOE、欧州ECB、日銀の先進国の主要中央銀行の金融政策発表がありました。

各国でインフレが高進する中、FRBBOEなどは緩和政策から引き締めへの転換への姿勢が明確になりましたが、一方でECBや日銀からは緩和政策の継続が示され、各地域によって統一感のない方針となりました。

下記は先週示された主要中央銀行の金融政策の一覧です。

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BOEはコロナショック以降で主要先進国初の利上げ、米FRBはテーパリングを倍増に加速し、22年に3回の利上げ見通しを示しました。

一方で欧州ECBと日銀は量的緩和は縮小するものの正常化の時期ではないとして利上げに対しては慎重な姿勢を示しました。

 

上記以外では先週ノルウェー中銀やメキシコ中銀でも利上げが行われ、世界的にはインフレ抑制のために金融正常化がトレンドとなってきている様に感じられます。

日銀は世界的なインフレ下でも0.1%という低いCPIで推移する特異な国であるため、その緩和姿勢の継続は正当化できると考えられます。

しかし、欧州ECBは直近では英国と同水準の4.9%というインフレ指標で示されながらも、22年中の利上げの可能性すら低いとして強い慎重姿勢を貫いているところにやや違和感を感じられます。

 

ユーロ圏の国々の状況を細かく見てみます。

下記はユーロ圏に所属する各国の個別の直近CPIの一覧です。

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一部の国は不明ですが、下はポルトガルの2.6%から上はリトアニアの9.2%とバラ付きが大きいです。中間値としては5%近辺に落ち着いていますが、一部の新興国はインフレが激しく、既に国民の生活はかなり苦しいと思われます。

ユーロ圏という経済共同体である以上は仕方のないことですが、今回の政策方針は、新型コロナが再び猛威を振るう中、域内の大多数の国々の景気回復を優先し、一部の国のインフレ高進には目を瞑ったということでしょうか。

 

また、ECBのラガルド総裁は「現在の高インフレの多くはエネルギー価格高騰と供給の制約による一過性のもの」としていますが、欧州の一次エネルギーとしてシェアの高い天然ガス(シェア24%)の値上がりが続いています。

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その欧州の天然ガスの供給元としてはロシアが最も多く、2019年時点で35.5%となっています。

脱炭素の流れが強くなっている中、CO2排出の少ないブリッジエネルギーとしての天然ガスの需要が増加しており、域内での生産の減少と共ににロシアの影響力は年々増しています。

そんな中、欧州は米国と共にウクライナを巡ってロシアとの対立が激しくなってきており、ドイツとロシアが新たに完成させた「ノルドストリーム2」も米国からの圧力で稼働できず、供給不安が高まっています。

12月に入ってからの欧州天然ガス価格の上昇は、単に厳冬に備えた需給だけでなく、地政学的なリスクも絡んできており、本当にこの状態でエネルギー価格が収まっていくのか、先行きの見通しが難しいところです。

 

これらから言えることは、ECBが多くの国を内包する共同体であることから状況把握が複雑で、また足元では地政学的リスクがエネルギー供給リスクに直結していることから、見通しが非常に難しい状況にあるということです。

 

個人的には現在のECBの姿勢はやや慎重すぎると考え、今回のFOMCにて大幅にインフレに対抗する手段(=利上げ)を拡げたFRBと違い、欧州でのインフレ対応が遅れるリスクが高まったと考えます。

 

以上

【12/6-12/10週の世界のリスクと経済指標】~注目される利上げペース~

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +12点(63点):大幅良化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

オミクロン株は感染地域が拡大するものの症状が軽いとの見方が強く、またファイザーや英保健当局がワクチンのブースター接種で有効性が高まると発表したことでやや警戒感が薄れました。

 

政治面ではオンラインでの米露首脳会談が開催され、バイデン大統領がウクライナへの侵攻観測に懸念を表明し、侵攻の場合には同盟国との経済制裁を伝えました。一方でプーチン大統領NATOの東方拡大を排除する法的に定められた保証」を要求し、お互いの主張が平行線を辿りました。

 

また米国主催で開催された民主主義サミットに台湾が参加したことに対抗してか、ニカラグアが台湾との断交と中国との国交回復を発表しました。中国も積極的に台湾周辺の切り崩しを図っています。

台湾を巡った米中対立だけではなく、ウクライナを巡った米露対立も徐々に懸念が拡大しており、米国の対応能力が分散されつつあります。

中露が裏で連携している可能性もあり気になるところです。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス12ポイントの大幅良化となりました。

注目の米11月CPIは総合指数が予想と一致の6.8%、コア指数も予想と一致の4.9%となりましたが、両方とも前回から大幅上昇となりました。

 

その他の指標も比較的良好な数値を見せました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~注目される利上げペース~

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 先週の株価指数は、オミクロン株が症状が軽いと言う見方が広まったために警戒感が後退し、主要指数は大幅反発となりました。

S&P500はオミクロン株や利上げに対する不安が残る中、最高値を更新して週を終えています。

 

 また注目の米11月CPIの発表では総合CPIが6.8%、コアCPIが4.9%と40年振りの上昇を見せインフレの高進が続いていることが示されました。

12/3発表の雇用統計での失業率4.2%となったことに加え、12/8発表の10月JOLTSでも求人件数1100万件を超え、7月に続き過去2番目の高さで高止まりしていることからも雇用市場はほぼ回復が見えます。

そうなるとFRBが注力すべきはインフレ退治であり、注目されるのはやはり次週のFOMCです。

今回のFOMCでの注目点は下記の通りです。

 

  1. テーパリング加速および利上げ開始時期に関する言及
  2. 来年の利上げ回数に関するFRB高官のドットチャート

 

11/30の議会公聴会でのパウエル議長の「テーパリングの早期終了を次回FOMCで議論するのは適切」という発言の通り、テーパリング加速が予想されます。

WSJFEDウォッチャー、ニック・ティミラオスの12/11の記事を読んでもテーパリング終了時期に関し、「6月から3月に」というワードが明示されていることから倍増はほぼコンセンサスであると考えられます。

さらに、もう一歩踏み込んで12月のFOMCで来春の利上げ開始の是非が議論されることにも言及されていますので、利上げ開始時期に関してパウエル議長から具体的な言及が出てくるかにも注目されます。

https://jp.wsj.com/articles/rising-inflation-keeps-pressure-on-fed-to-dial-back-stimulus-faster-11639174767

 

また今回は四半期末のFOMCであるためFRB高官による利上げ時期予想のドットチャートが発表されます。

今回は上に挙げたようにテーパリング加速は濃厚となっているため、その後の引き締めペースの方が焦点になっていると考えます。

下記の通り前回9月のFOMCでは22年のゼロ金利据え置き派と利上げ派が99で半々となっていました。

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 足元のFed Watchでは22年中の利上げ回数は2回が85%、3回が59.5%となることが予想されています。

つまりコンセンサスとしては2回の中間値となっていることが考えられます。

一方で12/10のCPIが予想通りだったことから、株式上昇と共に利上げを反映しやすい2年債利回りもやや落ち着きを取り戻して前日の0.69%から0.65%まで低下していますので、株式市場、債券市場共に「FRBが強くは出ない」とやや楽観視していると思われます。

私の予想も2回ですが、株式市場、債券市場にはやや楽観が感じられるため、たとえ2回となってもマーケットは動揺する可能性があると思います。

また実生活において1年前より全ての物価平均が7%近く上昇していることは異常であり、国民生活の圧迫緩和のためにFRBがよりタカ派に出ることにも警戒が必要だと思います。(下記はワシントンポスト記者がツイッターに挙げた主要インフレ製品)

https://twitter.com/byHeatherLong/status/1469303222556938240?s=20

 

いずれにせよ、今回のFOMCFRBがインフレをどこまで深刻に見ているかの指標になりますので、ドットチャートに表現される引き締めペースには特に注目したいと思います。

 

以上

【11/29-12/3週の世界のリスクと経済指標】〜後手に回るFRB〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(30点): 悪化 (基準点36点) 

経済指標  +5点(116点):良化 (基準点111点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス6ポイントの悪化となりました。 

 先週はオミクロン株が欧米を中心に世界各地で拡がりを見せたことで警戒が強まりました。またモデルナが既成ワクチンのオミクロン株への有効性が低いとの見解を示したことで不透明感が高まりました。ドイツではデルタ株での感染拡大も続いており、ワクチンの義務化に向けて検討が始まりました。

 

また滴滴出行の米国上場廃止と香港上場が伝えられ、中国当局が企業の海外資金調達よりも自国の情報統制を優先することが明確となり、その他の米国上場しているADR株の株価下落へも影響しました。

 

次週は米露のオンライン首脳会談や米国が主催する民主主義サミットがオンラインで開催され、その動向が注目されます。

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス5ポイントの良化となりました。

注目指標である米国のISMサービス業景況指数が予想65.0に対して69.1と大きく上振れを見せ、好調さを堅持しました。

 米雇用統計は、非農業部門雇用者数変化は予想55万人に対して21万人となり下振れましたが、一方で失業率は予想4.5%に対して4.2%と下振れしました。まちまちな結果となりましたが、失業率がFRBの目標であった自然失業率4.0%に限りなく近い値となり、雇用の改善の終わりが近いことを示しました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~後手に回るFRB

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 先週の主要株価指数は、前週からのオミクロン株への警戒に加え、FRBタカ派転換で米株を中心に続落しました。前週に続き、PERの高いナスダックと小型で弱いラッセル2000の下落が激しい傾向となりました。

 

 11/30の議会上院公聴会でパウエル議長は「テーパリングの早期終了を次回FOMCで議論するのは適切」「インフレが一過性であるという表現をやめるとき」という発言を行いました。そしてこれまでの雇用を優先してインフレを許容するスタンスから対インフレにシフトするという大きな方針転換を示しました。

 またパウエル議長に続き4人のFRB高官もテーパリング加速を支持し急激なスタンス転換を後押ししました。従来強いハト派であったSF連銀のデーリー総裁までもがテーパリング加速支持しているところに、FRBの焦りを感じさせました。

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それらを受けて先週はイールドカーブも大きくフラット化し、利上げを見込んで短い利回りは強く上昇した一方、景気減速を見込んで長い利回りは大きく低下しました。

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 ここ数ヶ月は、強いインフレから米国債イールドカーブはフラット化し続け債券市場は悲観視していましたが、株式市場は一貫して楽観し上昇していました。

3Q決算の好調さもありましたが、大前提として「インフレは一過性であり緩和は継続する」というFRBからのお墨付きが与えられていたからだと考えます。

 

しかし、今回パウエル議長は急遽そのお墨付きを撤回しました。

しかも行き過ぎたインフレを抑え込むため、想定よりも迅速な引き締めが行われる可能性も示唆しています。

そう考えると株式市場は債券市場との乖離が意識され始めた10月上旬のレベル(S&P500で言えば4300ポイント)まで調整する可能性も考えられます。

 

いずれにせよこの1週間でFRBの金融政策が後手に回ったことが明確となりました。

FRBはマーケットのコントロールを失いかけているように見えます。

FRBが再びそれを取り戻し、インフレ率が目標である2%に落ち着き、かつ企業業績が回復してくるまでは株価は伸びにくいと考えます。

ついては引き続き警戒を解かずに弱気スタンスを継続します。

 

次週は11月の米国CPIの発表があります。

予想は6.8%と上昇を示していますが、今後はよりインフレ指標の重要性が増してくるためその加速度合いに注目したいと思います。

 

以上