投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【10/24-10/28週の世界のリスクと経済指標】~交代した市場の牽引役~

先週の評点:

 

リスク   3点(33点):良化 (基準点30点) 

経済指標  -27点(95点):大幅悪化 (基準点122点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス6ポイントの良化となりました。

トラス首相が辞任した英国では、無投票でスナク前財務相が後任首相に就任しました。GSでの勤務経験があり経済通と見られるスナク氏が首相となったことで、一旦は英国市場に落ち着きが見られます。重要閣僚もトラス政権の閣僚が続投し、堅実路線も演出しています。とは言え英国が抱える問題自体は何も改善していないため、スナク氏の手腕が問われます。

 

また、ウクライナ侵攻以降、欧州では天然ガスの供給不安が続いていましたが、温暖な気候の影響とロシア以外からのLNG調達の成功により、予想外の供給過剰となっています。それにより欧州天然ガス先物価格もピークから3分の1まで低下しています。今後の天候次第で再び不足することも考えられますが、一旦の危機を乗り越えてきた印象です。

原油価格もOPECプラスの減産計画発表以降も90ドルを下回る価格で推移しておりエネルギーによるインフレ圧力は一旦低下したと考えられます。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス27ポイントの大幅悪化となりました。

先週は多くの重要指標が発表されましたが、欧米PMI、米住宅価格指数、消費者信頼感指数などの景気を表す指標が軒並み悪化しました。

特に米国の製造業PMIが2020年7月以来初めて50を下回り、既に22年7月から50を下回っているサービス業PMIと合わせて景気後退が顕著になってきました。

 

一方でカナダ銀行は、75bpsの利上げ予想に対して50bpsの利上げと、引き締めペースの減速に入りました。カナダCPIは6月の8.1%をピークに3ヶ月連続で低下を見せており、景気減速リスクが高まっている中で、利上げサイクルの終了に近づきつつあることが示唆されました。FRBでも12月FOMCでの利上げ軟化の議論が観測されており、追随するか注目されます。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】~交代した市場の牽引役~

 先週の株価指数は、習近平氏による経済政策の不透明感から中国株式は大きく反落しましたが、欧米主要指数は前週に引き続き大幅反発しました。

先週の欧米株の大幅反発の理由としては下記が考えられます。

①米景気指標が軒並み悪化を示し、前週末のWSJの記事による米FRBの利上げ減速観測を支援。

②それにより長期金利が低下し株価に支援的。

③GAFAMの決算ミスが多かったものの、それ以外は決算が思ったより悪くない。

 

先週は週頭から米製造業PMIが2020年7月以来の50割れを示し、また住宅価格指数や消費者信頼感指数も軒並み低下したことから景気減速が顕著になってきました。それらは先週末にWSJのニックが記事に上げた12月FOMCでの利上げ減速議論を裏付け、支援する形と捉えられました。

それにより米10年債利回りは前週末の4.21%から一時は3.89%と4%を大幅に割る水準まで下がり、株価にとって支援的となりました。

 

また先週は多くの企業の決算発表がありました。

KO、GM、CAT、V、MCDなど従来型企業の決算が予想を上回まわる一方で、AAPL以外のGAFAMに決算ミスが目立ったことが印象的でした。

 これまでGAFAMは急速なグローバルでの拡大で急成長を遂げてきました。しかし、インフレによるコスト増で広告費が削られ、消費選別によって嗜好品が削られた上に、ドル高による海外売上高の目減りが減少するという厳しい現状が浮き彫りになりました。

一方で従来型企業は、歴史が長く、深く商品が市場に浸透していることもあり、インフレによる値上げも市場に受け入れられて堅調な決算となりました。

全体の印象としては、グローバルな大型ハイテクのGAFAMのような企業が苦しく、その他の従来型企業は比較的堅調というイメージです。

 

そんな厳しいGAFAMの決算発表がありながらも、先週の株式指数全体がプラスで終えられたことは、やはり株価が底を打った可能性が高いと考えられます。

そして同時に市場の牽引役がGAFAMなどの大型ハイテク株から従来型企業に移ったことが顕著に現れたと感じます。

10/13の直近底値からの上昇率を見ても、ナスダック10.5%高、S&P500 11.73%高に対してダウ平均は14.66%高となっており、ダウ平均がナスダックをアウトパフォームしています。

やはり現在のように金利水準が高い状況では、グロース中心のナスダックは投資対象ではないことを物語っています。

 

先述したように、10/21のWSJの12月FOMCでの利上げ減速観測に対して、それを支援する10/24の米国景況感指標の悪化が明確になりました。加えて長期金利ドル円が明確に反転したことから、利上げのピークが見えたと判断し、ポートフォリオの株式の割合を30%→40%としました。株式はナスダックではなく、より分散の効いたMSCIコクサイとしています。

 

次週は11/1-2のFOMCで語られる12月の利上げ幅に関してどのような言及があるのか、またその後の11/4雇用統計で雇用の減速が確認できるのか、注目します。

 

また、こうしてアウトプットを書いている最中に、WSJのニックが、ターミナルレートが予想より引き上げられる可能性を示唆する記事を発表しているので、明日からのマーケットの反応するか注目します。

https://www.wsj.com/articles/cash-rich-consumers-could-mean-higher-interest-rates-for-longer-11667075614

 

以上