【2023年1/16-1/20週の世界のリスクと経済指標】〜株式市場の勇み足感〜
先週の評点:
リスク -2点(28点):悪化 (基準点30点)
経済指標 +5点(85点):良化 (基準点80点)
【リスク】
先週のリスクはマイナス2 ポイントの悪化となりました。
ウクライナ情勢では、春先に予想されるロシアとウクライナの大規模地上戦に向けて西側各国がウクライナに供与する戦力について協議しました。重戦車の補強が重要となってきますが、欧州各国は概ね保有する戦車の供与を承諾しているものの、各国の戦車の製造国であるドイツが供与に二の足を踏んでいます。ドイツが再輸出を許可しなければ他国が保有する戦車も供与できず、「欧州を分裂させる」と批判が広がっています。
また中国ではゼロコロナ政策の影響で22年4QのGDP成長率が2.9%となり、通年でも3%となったため、中国当局の目標である5%を大きく下回る結果となりました。また昨年末に中国の総人口も61年ぶりに減少したことが発表されました。現在の実体経済の減速と将来の減速も予感させる結果となり、中国の成長力の低下が顕著になってきた印象です。
【経済指標】
先週の経済指標はプラス5ポイントの良化でした。
暖冬でエネルギー価格が低下していることを反映してか、1月のZEW景況指数がドイツ、ユーロ圏共に大きく上振れ、欧州のセンチメントが改善していることが示されました。
注目された日銀金融政策決定会合では、事前に予想されたYCCの許容幅の拡大は行われず、金融緩和の維持が発表されました。日本経済にとってはひとまず安心感が得られたとして株価が上昇しました。一方で為替は127円台から131円台まで大きく動きながら、中間の129円台となって週を終えました。
米国指標では12月小売売上高が-1.1%と低下し、個人消費が弱含んでいることが示されました。昨年は年末商戦が前倒しされていたことに加え、消費がモノからサービスに移行しているため、モノの消費が大幅に低下していると思われます。
また、12月PPIも前月7.3%から6.2%と1%以上大幅に落ち込んでおり、急速に需要が減退していることも示されました。インフレの鈍化傾向は歓迎されるべきですが、急速すぎる低下は、行きすぎた景気悪化を心配させます。
【先週のマーケットの振り返りと考察】
先週の株価指数は日銀が緩和維持を決定した日経や、ゼロコロナ政策を撤廃して景気回復が期待される中国株などアジア指数が堅調に推移しました。一方で米国株はまちまちでGSの予想外に大きい決算の取りこぼしから銀行株を中心に株価を下げ、ダウ平均が2.7%安となりました。一方でナスダックは週末に大きく反発し、プラ転して週を終えました。
〜株式市場の勇み足感〜
先週は1/20に株価が大きく反発し、ナスダックはプラスに転じました。考えられる要因としては下記の通りです。
①FRB高官の姿勢にやや緩みが見えるようになってきた。
②NFLXが加入者数を大幅に伸ばしたことや、MSFTが大幅なレイオフを発表したことから収益が改善すると肯定的に捉えられた。
下記は先週のFRB高官の発言内容です。
前週までは、5%を超える高いターミナルレートの見通しを維持するタカ派な姿勢が占めていました。しかし先週は次回FOMCでの25bpsの利上げ幅を具体的に支持する発言をするメンバーが現れ、確かにFRBメンバーの中でも考え方にバラツキが出てきた印象です。
一方でFRBが重要視している労働市場の引き締まりは、収束が見えていません。下記は1月第2週までの新規失業保険申請件数の推移です。
昨年末から大手ハイテク企業のレイオフが多くなってきているにも関わらず堅調さを見せており、1月第2週は190千人と200千人を下回りました。インフレ指標は確実に鈍化してきていますが、労働市場の堅調さは変わらず推移しており、現時点でFRBが簡単にピボットに向けてスタンスを転換するとは思えません。
1/20は株式市場が大幅に反発しましたが、金利は概ね上昇しており、かつハイテク株中心の上昇であったことから株式市場の楽観が目立つ、やや違和感を残る印象でした。
NFLXは会員数は延びましたが、そもそも決算としては純利益が91%減となった上、EPSも予想に対してミスしています。またMSFTにしても好決算が出たわけでもなく、1万人の削減を発表しただけです。悪材料の出尽くしとして捉えたのか、株式市場の勇み足感は否めません。
ついてはまだマーケットのリスクは衰えていないとして、次週も引き続き株式20%、現金80%の弱気のポジションを維持します。
次週は有名どころの決算としては1/24にMSFT、1/25にBA、IBM、TSLA、1/26にINTCがあります。特にレイオフを発表したばかりのMSFT、苦戦が伝わるTSLAの決算に注目します。
以上