投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【8/9-8/13週の世界のリスクと経済指標】〜中国のIT規制から考えるその狙い〜

先週の評点:

 

リスク   -9点(36点):大幅悪化 (基準点45点) 

経済指標  -2点(51点):小幅悪化 (基準点53点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

デルタ株の拡大は進み、米国でも南部のワクチン未接種の人が多い地域を中心に拡大し、新規感染者数は再び7日平均12万人を超えてきました。

米国はロックダウンはしない見通しですが、経済の先行きに再び不安感が出てきました。

それに伴いWHOが反対する中、米国でも免疫力が低下した人々へのワクチンの3回目接種が承認され、ファウチ氏もいずれは全員が3回目接種が必要との見解を示しました。

 

 また、先週はアフガニスタン情勢が急に緊迫度を増してきたため、新たな項目として加えました。

8月末の米軍の完全撤退を前にタリバンが急速に勢力を拡大し、首都カブールに迫っています。米国も新たに5000人の兵士を派遣していますが、抗戦ではなく外交官などの退避を目的としており、タリバンのアフガン全土の制圧が間近と報道されています。

 一方でそれに先駆けて中国が7/28にタリバン幹部を天津に招いて王毅外相と会談し、復興に向けての協力を約束しています。中国から中東へと抜ける中央アジアで空白地帯となっていたアフガンを手中に収めることで、中東での中国の影響力が増すことが懸念されます。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はマイナス2ポイントの小幅悪化でした。

中国のCPIは前回1.1%より低下し1.0%となったものの、PPIは逆に前回8.8%から9.0%へ上昇し、相変わらず原料高による物価上昇が消費者価格へ転嫁が進んでいない状況を示しました。

 また、米国のコアCPIは前回4.5%から低下し4.3%となりました。前月比では前回0.9%、予想0.4%に対して0.3%と下振れを示したことからインフレの鈍化と受け止められました。

一方で米国のPPIは前回/予想ともに5.6%に対して6.2%と上振れ、今後の更なる物価上昇への懸念を残しました。

 

8月ミシガン大学消費者態度指数は予想81.2に対して70.2と大幅に低下し、デルタ株の蔓延からか消費マインドの悪化を示唆しました。

 

 次週は米小売売上高、NZ準備銀行政策金利発表に注目したいと思います。特にNZ政策金利は先進国初の利上げが予想されていますが、利上げの流れを作るか注目しています。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週も株価指数は堅調に推移しました。米株はCPIが鈍化傾向を示したことやインフラ法案の上院通過が好感されたことでダウを中心に強含み、ダウ、S&P500は最高値を更新しました。

1Q決算で好調な業績が続きながらも、全体的には大きな動きは少なく横ばいで小幅な上昇に終始した印象でした。

 一方でナスダックは長期金利の上昇やヘルスケア株の下落が足を引っ張り伸び悩みました。

中国株式も先週に続いて持ち直し、それに伴って日経平均も若干上昇するも節目である28,000円の上値が重い展開でした。

主要企業の決算発表も終わり、次週も動きの少ない横ばいの動きを予想します。

 

 

〜中国のIT規制から考えるその狙い〜

さて、8月5日のWSJに考えさせられる記事がありました。

※中国が目指す経済、インターネットより製造業

https://jp.wsj.com/articles/china-wants-manufacturingnot-the-internetto-lead-the-economy-11628128657?mod=saved_content

 

要約するならば、中国当局はここ最の中国の成長を支えてきた大手IT企業よりも実体経済を支える製造業に重きを置く政策をとっている、ということです。

欧米的なサービスであるソーシャルメディア電子商取引などのテクノロジーは「あればうれしいもの」ですが、半導体、電EV用バッテリー、民間航空機、通信機器などの製造業のテクノロジーは「なくてはならないもの」であり優先順位が高いとしています。

従って中国は欧米の様に脱工業化には追随しないことを望んでいるとしています。

 

アントの上場延期から始まり、自国IT企業に対する締め付けを強める中国ですが、なぜ成長分野に足枷をはめる政策を取るのか私にはその本質的な狙いがよく見えていませんでした。

しかし、この記事を読んでその狙いが見えてきました。

 

記事中に書いてある内容も含めて、大手IT企業がこのまま拡大した場合に中国当局が阻害要因として考えていると推測するものは下記の通りです。

 

①膨大な人口に対する雇用を保てない可能性がある。

欧米がそうであったように、いずれ経済主体が製造業から知識型サービス業に移行すると、大量の労働力と資本を必要とする製造業が衰退し雇用の絶対数が減り、膨大な人口の雇用が保てない。

 

②知識型サービス業化によって経済格差が拡大する可能性がある。

欧米の様に知識型サービス業化が進み過ぎると、その効率の良さから富が一部の資産家に集中する一方、労働者は雇用の流出で仕事を失い経済格差が大きくなる。

 

③既存の国有企業による秩序を脅かす存在となり得る。
中国の経済主体はあくまでも国有企業であるが、大手IT企業の急激な資本やサービスの拡大により既存の国有企業による秩序に取って代わる危険性がある。特に国有企業の割合の高い金融分野でのアントやWechatペイのような企業の拡大は当局にとって脅威。

 

こう見てみると中国当局の大手IT企業への締め付け強化は「共産党指導体制を堅持する」という目的において非常に理にかなったことのように思えてきます。

欧米の知識型サービス業が突き進んだ結果の副産物として、米国では経済格差の拡大からのポピュリズムの台頭が激しさを増し、年初の国会議事堂襲撃に繋がりました。

恐らくこれが中国共産党指導部の頭に鮮明に残り、自らの統治を脅かす可能性のあるものとして強烈に認識されたのではないかと考えます。

所詮は欧米型ITサービスのコピーであった自国IT企業の成長が止まろうが取るに足らず、共産党政権の永続的な繁栄を担保するためには寧ろそれをここで停滞させた方が得策と考えたのではないかと思います。

 

民主主義国家から見た是非は別として、中国の政策は一見目を疑う内容のものがありますが、本質を突き詰めていくと非常にロジカルで戦略に基づいていると感じます。

これも一党独裁専制主義政権だからこそなせる業であり、ブレ幅の大きい民主主義国からすると非常に脅威だと感じます。

 

以上

【8/2-8/6週の世界のリスクと経済指標】〜テーパリング機運の高まり〜

先週の評点:

 

リスク   -5点(31点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(94点):小幅良化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス5ポイントの悪化となりました。

新型コロナはデルタ株の蔓延に収束が見えず、日本も新規感染者数が15,000人を超え、米国も再び16万人台となってきました。

米国ではワクチン接種完了者が50%を超え死者数が抑えられていることから今のところはロックダウンを行わない方針となっていますが、今後の状況次第では経済回復状況への影響が懸念されます。

また、ファイザー、モデルナの両社がワクチン効果持続のために3回目のブースター接種の必要性を示しました。

世界的に需要の高い欧米製のワクチンですが、途上国への配分が減る可能性があり、中国およびロシアが途上国へつけ入る隙を与え、格差問題となる可能性があります。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

米雇用統計はNFPが予想87万人に対して94.3万人と大幅に上振れ、前回値も85万人から93.8万人に修正され、雇用の強い回復が示されました。

失業率も前月の5.9%から5.4%へ大きく改善が見られました。

 

またISM景況指数は、製造業は半導体不足からの「作りたくても作れない」という状況を表し鈍化しましたが、非製造業は人々の活動再開からリベンジ消費などが活発になったことで予想60.5に対し64.1と大幅な改善を示しました。

 

次週は中国7月CPI、米7月CPIの発表があります。

中国CPIは中国景気を左右する消費活動を図る上で、米CPIはテーパリングの時期を決めるための重要指標となるため注目します。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週の主要株価指数は全体的に堅調に推移しました。

特に日経平均は前週の落ち込みからの自律反発と好調な1Q決算から買いが先行し2%弱の強含みとなりました。

米株指数も好調な2Q決算が多く、金曜日には雇用統計が上振れたことも手伝い上昇しています。

一方でAMZNやトヨタに代表されるように日米共に好調な決算ながら、今後の見通しに鈍化傾向が見えると既に高いバリュエーションによって株価が下落する銘柄も目立ちます。

それによって業績好調な企業が多い中でも金融相場で過度に上昇した株価に業績が追いつかず、上値が重い印象です。

 

 

〜テーパリング機運の高まり〜

さて、先週はテーパリングに対する機運が高まった週でした。

7/27-28でFOMCが終わったため、再びFRB高官の発言が相次ぎました。

下記は最新のFRB高官の発言を更新したものです。

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 7月のFOMC後に発言がメディアに取り上げられたメンバーは赤字で記載しているパウエル議長含め9名ですが、そのうち6名がタカ派発言をしています。

7月のFOMCにおいてテーパリング議論がなされマーケットでもコンセンサスが形成されたことで、FRBメンバーも当然の如く早期テーパリング開始への発言を行なっています。

特にウォラー理事、クラリダ副議長の発言の影響が大きかった印象です。

これまでFOMCの常任メンバーである副議長や理事からの発言は比較的少なかった上に、加えてテーパリングに対してタカ派発言となったため、早期のテーパリングを連想させました。

 

また、FOMC前からタカ派発言をするようになったシカゴ連銀総裁に加え、FOMC後にはウォラー理事、ミネアポリス連銀総裁の3人がここ最近ハト派からタカ派へスタンス転換しています。

これによりFOMC議決権を持つメンバーの11人のうち6人がタカ派スタンスとなり、ほぼテーパリングは間違いない状況かと思います。

 

そして、8/6の雇用統計にてNFPが94.3万人と予想を上振れ、失業率が5.4%と大きく改善したことで、それを後押しする形になりました。

FRBメンバーからは「緩和後退には雇用統計の数値が重要」とのコメントが相次いでいましたが、雇用統計にて明確な改善が続いたため、テーパリングに向けた動きが肯定されることとなりました。

 

足元ではデルタ株が拡大していますが、米国ではデルタ株が再拡大してもロックダウンしない見通しであり、今後短期的に景気が急激に後退する可能性は薄いと考えます。

ついては9月の雇用統計を確認した後の9月のFOMCでのテーパリング発表に向けて突き進む機運が確実に高まってきていると考えます。

そしてまた、先週の株価の反応に大きな影響がなかったことを見ても、マーケットは既にテーパリングを織り込んでいることが伺え、今後も大きな変動なく粛々と移行していくと思われます。

 

以上

【7/26-7/30週の世界のリスクと経済指標】〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

先週の評点:

 

リスク   -3点(33点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +9点(99点):大幅良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化としました。

新型コロナは世界的にデルタ株が拡大し、米国でも再び1日あたり感染者が12万人を超え、日本でも1万人を超えました。米東部で発生したクラスター感染では3/4がワクチン接種者で、自身は重症化しなくてもウィルスを保有し他者へ感染させるリスクが懸念され始めました。

またイスラエルでは減少しているワクチンの予防効果に対して3回目のブースター接種開始しました。

効果が確認されれば有効な手段となるも世界的なワクチン不足が拡大する可能性があります。

 

政治面ではシャーマン米国務副長官が訪中し王毅外相と会談しましたが進展はなく、米中首脳会談の目処も立ちません。

一方でオースティン国防長官が東南アジア訪問しフィリピンとの軍事協定存続を決め、ブリンケン国務長官はインド訪問しワクチン生産支援を行うとともにクアッドでの協力を確認しました。

アジアでの対中プレゼンスを高めるために米国の対アジアの外交が活発化しています。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標はプラス9ポイントの大幅良化となりました。

注目のFOMCでは「テーパリング向けて経済が進展した」としつつも、テーパリング開始については「今後複数回の会合」での経済の進捗を評価するとの声明を発表しました。

一方でパウエル議長は記者会見で「その時期はまだ当分先」という認識を示し、ややタカ派な声明とハト派の記者会見でうまくバランスをとった印象で、市場も荒れることなく無難に通過しました。

 

 一方で米国の4-6月期GDPは結果6.5%と予想の8.5%を大きく下回り、またPCEコアデフレーターも予想を下回り、やや景気の減速感を感じる結果となりました。

デルタ株によりワクチンを接種しても手放しで経済活動再開とならない状況や恒常化する半導体不足などからの在庫不足が足を引っ張っている印象です。

今後もFRBは難しい舵取りを迫られそうです。

 

次週は米ISM景況指数、豪準備銀行政策金利、英中銀政策金利、米雇用統計があります。

景気にやや減速感が感じられるようになった中で豪英中央銀行がどのような舵取りを行うのか注目です。

また雇用統計はFRBの今後の金融政策の指標になるため注目しています。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週は週明けから中国政府の民間教育企業への規制で中国株が暴落しました。

米国株式指数は2Q決算の本格化とFOMC軟調な動きながらも大崩れしなかった印象です。

一方で個別の米ハイテク企業の2Q決算は、好調な業績を示すも今後の見通しでの鈍化傾向が示されると高い期待から利確売りを誘うものが多かった印象です。

特にAMZNの売上高が11四半期ぶりに市場予想に下回ったことで決算発表後に7.56%安となり、大型ハイテク株全体の成長鈍化の懸念を誘い足を引っ張りました。

 

今回の大型ハイテク株の下落を「調整過程」と見るのか「押し目」と見るのか判断が難しいところですが、ハイテク株以外の決算自体も概ね好調なものが多く、次週も軟調ながらも大崩れはしない相場が続くのではないかと推測します。

しかし日本企業は好決算を出しながらも通期の上方修正がないとすぐに利確売りに晒される傾向があり、さらに中国政府の規制強化も相まって下落傾向にあるため日経は下目線で見ています。

 

 

〜中国政府のマーケット重視からの訣別〜

さて、先週は上海総合指数が4.31%安、香港ハンセン指数が4.98%と中国株式が暴落しました。

私は7/4に投稿したように中国当局の締め付け強化から中国株式に強い懸念を持っていましたが、先週になってさらに当局の締め付けが強化されました。

 

具体的には下記の通りです。

 

①民間教育産業を非営利化し外国からの投資や株式公開を禁止

 

中国人民銀行が上海の銀行に対して住宅購入者への金利を1軒目4.65%→5%、2軒目5.25%→5.7%
 に引き上げを指示し不動産部門の加熱抑制策を強化

 

③上場予定企業の海外上場に対する管理監督を強化

 

これまでも金融市場に対して様々な規制を強化していましたが、さらにその傾向が強まりました。

下記はその規制の一覧です。

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 中国も不動産価格や原材料価格の高騰に苦しんでおり、それらに対する抑制策はある程度理解できます。

しかし、赤字で記してあるような企業活動に直接介入し、増して上場企業を勝手に非営利化する行為はさすがに金融市場のルールを根底から覆すものです。

 

 これまでは経済発展優先で欧米の資本主義のルールに則りマネーを集めてきた中国ですが、これで共産党による統制優先に切り替えてきたことが明白になりました。

中国政府による突然の規制強化や政策変更により投資家が損害を被る可能性高くなってきた今、そこまでのリスクを負って海外投資家が中国に投資するメリットがなくなってきたと言えます。

米SECも米国市場への中国企業の迂回上場を監視するため審査を厳格化すると発表しました。

これで経済面でも米中の分断が進み、最大のマーケットである米国からのマネーの流入が減少する流れとなると思われます。

 

私個人としても、そのような政治的リスクのある国に投資することはできませんので、保有していた中国株式を多く含む新興国株式インデックス(MSCIエマ)の投資信託は全て売却しました。

 

外国からの影響を受けずに独自の発展を作り上げていくため、中国は今後さらに統制強化することが予想されます。それらが世界的な金融市場に悪影響を及ぼさないか注意深く見ていきたいと思います。

 

以上

【7/19-7/23週の世界のリスクと経済指標】〜主要国の金融政策スタンス〜

先週の評点:

 

リスク   -1点(35点):小幅悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(70点):小幅良化 (基準点69点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス1ポイントの小幅悪化としました。

デルタ株の猛威は収まらず、東南アジアでは工場停止に追い込まれ、サプライチェーンの停止からトヨタなど日本の製造業にも影響が出始めています。

またファイザーはデルタ株にも効果があると発表しつつも、イスラエルではファイザーワクチンの予防効果が39%まで低下していると発表しました。ワクチンを接種しても手放しで経済活動に戻れないことが懸念され始めました。

 

政治面では独露のガスパイプライン「ノルドストリーム2」が容認されました。

ノルドストリーム2は長年米独間での懸案となっていましたが、米国側に対中戦略においてドイツだけでなくロシアとの距離を近づけたい思惑が働いたのか、一転容認となりました。

 

また、東京で初の無観客でのオリンピックが開幕しました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化でした。

米国の6月住宅着工件数は、ここ最近の原材料高を反映してブレーキがかかるかと思いきや予想1.2%に対して6.3%と大幅な増加を見せました。インフレ圧力が高まりながらも引き続き需要が旺盛であることが示されました。

 

 ECBは7/8に中期インフレ目標をこれまでの「2%に近いかそれを下回る水準」から「2%」へ引き上げることを発表していましたが、これを持続的に達成するまで超緩和政策を継続することを新たなガイダンスとしました。

 

欧米のPMIはドイツが製造業、サービス業共に前回値、予想値を上振れました。

ここ最近陰りが見え追加金融緩和を行なった中国経済ですが、中国経済の側面指標であるドイツ製造業PMIから推測すると未だ好調さは継続している様に見えます。一方で7/21に発表された日本の工作機械受注では、中国向けが前月比27.6%減の280億円と急激に鈍化しており気になるところです。

 

次週は米FOMC、米4-6月期GDP、米PCEコアデフレーターが注目指標です。

FOMCは8月のジャクソンホールでのテーパリング示唆がコンセンサスとなっていますが、直前のFOMCで議論される内容が注目されます。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 週明けはデルタ株の急拡大による景気回復の遅れが懸念され、安全資産である米国債券への逃避が強まって長期金利は一時1.2%を割り、それと共に主要株式指数は大幅に下落しました。

しかしその後は押し目買いの反発から好調な企業決算を経て楽観が戻り、最終的には米株3指数は最高値を更新し、ダウも史上初の35,000ドルに乗せて週を終えました。

 

S&P500採用銘柄のうち120社が決算発表済みですが、その88%がコンセンサスを上回っている模様です。

金融相場の底堅さと米国企業の業績好調さが目立った週となりました。

 

 次週はテスラ、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、ボーイング、フォード、キャタピラーシェブロンエクソンなどの大手企業の決算が続きます。

先週はナスダックがアウトパフォームしましたが、次週もこのまま上昇基調に乗りながら、ハイテク株の決算好調を背景にナスダックがアウトパフォームすると予想します。

 

 

〜主要国の金融政策スタンス〜

さて、次週は7/27-28にて米FOMCが開催されます。

テーパリングが示唆されるとコンセンサスとなっているジャクソンホール会議前の最後のFOMCとあって会議の内容が注目されます。

先進国の景気回復からインフレ圧力が高まっている中で、米国の金融政策に注目が集まっていますが、米国以外の各国も様々な政策を打っています。

下記は各国の7/24現在の金融政策の一覧です。

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オレンジ色がタカ派スタンスの政策、青色がハト派スタンス、緑色がハト派拡大スタンスです。

 

これらの現状を整理すると下記の通りとなります。

 

インフレ目標をCPIが上回り、景気回復を背景にテーパリングしている国
 →NZ、カナダ、豪州(先進国)
インフレ目標をCPIが上回り、景気回復が弱いながらもインフレ抑制で利上げしている国
 →トルコ、ロシア、ブラジル、メキシコ(新興国

インフレ目標をCPIが上回っているが景気回復に不安があり利上げできない国
 →南アフリカ、インド、韓国(新興国

インフレ目標をCPIが下回っているため現状維持、もしくは緩和拡大傾向の国
 →イギリス、EU、日本、中国(先進国+中国)


米国の22年からのテーパリングおよび23年中の利上げは既にコンセンサスとなっていますが、今後より詳細な時期や規模が示されることとなります。

その際にコンセンサスとのズレがどの程度発生してくるかによって、各国の金融政策への影響が出てくると思われます。

 

 仮に米国のテーパリング時期や利上げ観測が早まるのであれば、自国通貨安とインフレ高進の防止のために、既に利上げに踏み切っている②のトルコ、ロシア、ブラジル、メキシコは更なる利上げに踏み切らざるを得ないでしょう。

また利上げ予備軍である③の南アフリカ、インド、韓国などは未だ経済回復途上であり、できる限り緩和を維持したい状況ですが、こちらも利上げに踏み切らざるを得ないと思います。

 

もちろん米国のテーパリング開始や利上げ観測が米国自身や先進国の株式市場を冷やさずに軟着陸できるかどうかが最も気になるところです。

一方でそれに連動して各国の経済にどのように作用し、その国の金融政策にどの様な変化をもたらすのか、というところも注意して見ていきたいと思います。

 

以上

【7/12-7/16週の世界のリスクと経済指標】〜選挙を前に思うこと〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +1点(102点):小幅良化 (基準点101点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化としました。

新型コロナは東南アジアでの感染拡大が止まりません。インドネシア、タイ、マレーシアなどでは病床も不足しており、日系企業の邦人駐在員の帰国も始まりました。(私の会社のインドネシア、タイの子会社の駐在員も帰国となりました。)

欧米でも再び上昇を示していますが、一方で死亡者数はワクチン効果で強い伸びは示しておらず、イギリスでは今後は感染を受け入れながら規制を解除できるかどうか試していくことになります。

 

またキューバ南アフリカ、ハイチなどで政情不安となりました。

キューバではインフレやコロナ対策への不満、南アフリカでは前大統領収監に対する抗議、ハイチでは大統領暗殺と、人々のストレスが溜まる中で混乱が広がっています。それぞれ経済的には小国であり、世界経済に影響を与えるものではないと思いますが、国民の民意の変化も含めて注目していきます。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

米6月コアCPIは4.5%となり6月も強いインフレ傾向を示しました。

それに対してパウエル議長は、緩和縮小は「まだ先」と発言し、改めて現在のインフレが一過性である認識を示しました。

米6月小売売上高は予想に反して0.6%の伸びを見せ消費の回復を示しましたが、一方で7月ミシガン大学消費者態度指数は予想86.5に対し80.8と大幅に低下し、強いインフレが住宅や自動車の購入意欲を削ぎ始めていること示しました。

米経済は回復しつつも、徐々にインフレが消費に対して重荷になってきた印象です。

 

一方で豪準備銀行のテーパリングに続き、NZ準備銀行は量的緩和を停止しました。

また4月に量的緩和縮小を開始したカナダ中銀は債券購入額をさらに10億カナダドル縮小しました。

経済規模の大きくない先進国では、米国の動きを意識しながらもテーパリングでインフレの抑制に向けた動きが展開されています。

 

中国4-6期GDPは7.9%と堅実な成長を見せるも予想8.1%には届かずやや減速感を示唆しました。

 

次週は米住宅着工件数、ECB総裁定例会見、独PMIに注目します。

住宅着工件数はインフレ圧力からの消費の減退が具体的な指標として現れ、景気のブレーキなるかどうか注目します。

ECB総裁定例会見は、先週3月末以降の金融政策に関する新しいガイダンスを出すことが示されましたので、それがどのようなものになるか注目しています。

また独PMIはやや減速傾向にある中国経済が未だ堅調なのかどうかを図る指標として注目します。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は欧米主要指数は軟調に推移しました。

デルタ株が東南アジアで猛威を振るい、欧米でも再び感染再拡大していることを受け景気回復の後退が意識されました。

また米6月CPIの結果を受け、半導体や労働者の不足が収まらずインフレが長期化する懸念が燻り始めました。

一方で長期金利は1.3%まで低下しながらもドル高となり、安全資産である米国債への資金の移動が行われました。

 

次週は米国企業の決算が本格化しますが、先週の銀行株の株価を見ると、やはり決算のハードルが高くなっていることが伺え、相当なサプライズがないとやや上値が重たい展開が続くと思われます。

金利も低下しており、特にバリュー株には厳しい状況であることからダウに下目線です。

 

 

 

〜選挙を前に思うこと〜

さて、世界の政治経済の動きとは関係ありませんが、今週末は私が住む兵庫県の知事選挙があります。

私にとって今回の選挙はコロナ禍となってから初めての選挙です。

従来から選挙には積極的に参加してきましたが、コロナ禍となったこの1年超で選挙に対して思いを新たにする出来事がありました。

 

それは米国の大統領選です。

トランプ前大統領もワープスピード作戦など強いリーダーシップでコロナ禍での米国を率いていましたが、選挙が近づくにつれ独善的で攻撃的な発言で分断を煽り暴走しました。

それにより米国の民主主義が一時大きく衰退しました。

しかし大統領選挙での国民の選択によってバイデン政権に変わりました。

それにより一気に逆回転し同盟国との関係重視や分断を回避するための経済格差縮小への政策に舵が切られました。

行き過ぎた前大統領の暴走行為が民意の力によって否定され、修正されたのです。

私はその民主主義のダイナミックな修正力に驚き、民意の力強さを実感しました。

 

我々民主主義国家の国民はリーダーの能力を見極めることができ、もしその能力や方針に満足できないのであれば選択によって修正できる力を持っています。

 一方で中国などの専制主義国家においては、国民はリーダーを選ぶことができず、仮にその方針が行き過ぎ、国民が修正したいと思ったとしてもそれはなかなか出来ません。

多くの場合、反乱分子として弾圧を受けることになります。

 

メルケル首相は2019年に米ハーバード大学で講演した際に「自由が当たり前でないことを忘れてはいけない」と言いました。

我々は18歳になると自動的に選挙権を与えられますが、若い人を中心にそれを行使しない人も多くいます。

しかしその権利は当たり前のものではなく、専制主義国に生きる人たちには得難い権利です。

その権利があるからこそ、我々は民意に叶う方向へ国を進めていけるのだと思います。

つまり選挙権は世界をより良い方向へ導くために、我々民主主義国家の国民に与えられた最も尊ぶべき権利であると考えます。

 

今回私が投票する選挙は国会議員を選ぶわけでもなく、それが直接国家元首を選ぶことに繋がるわけではありません。

しかし、私たちに与えられた尊い権利を行使するという意味で、今回の県知事選挙に特別な思いを感じています。

私の票が私たちの進む方向を作り上げていくことを強く意識し、誰に託すのが最良なのかしっかりと考えた上で投票に臨みたいと思います。

 

以上

【7/5-7/9週の世界のリスクと経済指標】〜指標から見える中国経済の陰り〜

先週の評点:

 

リスク   -6点(30点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  -14点(37点):大幅悪化 (基準点51点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス6ポイントの悪化となりました。

新型コロナはデルタ株の蔓延で世界的な新規感染者が再び増加傾向に変わりました。

インドネシア、タイなどの東南アジアではかつてない急拡大に見舞われ、欧州でもイギリスやスペインなどで再拡大し、景気回復の先行きに不透明感が出ています。

一方でワクチンの効果も出ており、イギリスでは感染者は増えているものの死者数が低位となっているため、ロックダウンの解除に踏み切りコロナとの共存を図る試みが行われます。

 

政治面では中国当局が自国企業である滴滴出行のアプリのダウンロードを停止し、同時に自国のハイテク企業に対して海外上場の規制強化を発表しました。米上場の中国企業に対して米政府が監視を強める中、中国当局が情報流出に警戒を示した形となっています。これにより米中の分断が貿易や技術分野だけでなく資本市場にまで及んできました。

 

一方でG20財務相会議において、最低法人税率15%や国際的な法人課税の新たなルールの大枠を合意しました。米中を中心に分断が進む中、国際ルール作りにおいては一定の協力体制が残されていることが示されました。

 

 

【経済指標】

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 先週の経済指標は米欧中とどれも景気減速から悪化を見せ、マイナス14ポイントの大幅悪化でした。

個人的には中国指標に注目しましたが、詳細は後述します。

 

先週は各国中銀の政策発表も相次ぎ、ECBは物価目標をこれまでの「2%に近いかそれを下回る水準」から「2%」へ引き上げ一時的な上振れの容認姿勢を明確にしました。

一方で豪中銀は政策金利を現行のままに維持しながらもQEの額を減額しテーパリング開始することを示しました。

 

次週は米CPI、パウエル議長発言、NZ中銀政策発表が注目されます。

米CPIは一時的な強いインフレは既にコンセンサスとなっているため、大きく揺れることは少ないと思います。またパウエル議長の発言もサプライズなく従来スタンスの発言になると思われます。

NZ中銀政策発表は、向こう数ヶ月でQE終了が予想される中で、豪中銀に続きテーパリングにどこまで踏み込まれるか注目です。

 

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は欧米指数は小幅上昇、アジア及び新興国株式が大きく下落しました。

デルタ株によってコロナが世界的に再拡大する中で、ISM非製造業景況指数が60.1と下振れしたことにより景気回復の遅れが意識され、安全資産である米債券が買われ長期金利は一時1.25%まで低下しました。

それと共に株価が調整しましたが、金曜日には長期金利も1.36%まで急回復し、終わってみれば欧米株式は上昇し、米株3指数は最高値を更新しました。

 

先週の米株下落の原因は長期金利のオーバーシュートでしたが、金曜日にすぐに落ち着きを見せたことから、高値圏で敏感になっている市場の「くしゃみ」だったと考えられます。

次週も米株は引き続き適温相場の中、堅調に推移すると思われます。

 

 

〜指標から見える中国経済の陰り〜

 さて、前週に私は中国当局の締め付け強化による政治的なリスクから中国株式の伸び悩みを予想しましたが、先週はそれを裏付けるような指標や政策が見えてきました。

 

下記はここ直近1年間の中国のPPI(生産者物価指数)とCPI(消費者物価指数)の推移を示したものです。

PPIは生産者サイドから見た原料コストなどの物価変動の数値を表します。

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青軸のPPIは、最近の中国当局のインフレ抑制策の影響で6月に若干頭をもたげていますが、昨夏から急激に上昇してきています。

一方でオレンジ軸のCPIは昨夏からから低下→横ばい傾向となっており、PPIとCPIのギャップが広がっています。

 

これは、モノの生産にかかる原料コストは商品価格の上昇により強い上昇を示しているものの、消費者需要の低迷によりそれが消費者価格に転嫁されていないことを表しています。

つまり足下では生産者と消費者の間に入る中間業者(サービス業者)の収益が圧迫されて苦しい状況に陥っている可能性が考えられます。

それを表してか、6月サービス業PMIは前回55.1、予想54.9に対して結果50.3と辛うじて基準の50をキープしたものの14ヶ月振りの低水準に落ち込み景気回復の鈍化を示しました。

 

そしてそれに受けてか、中国人民銀行は9日に預金準備率の0.5%の引き下げを発表し、主に中小企業を対象に1兆元(約17兆円)の資金が供給されることとなりました。

各国がインフレ抑制のために緩和後退に向けて動く流れに逆行する追加金融緩和は、これまでの中国経済の楽観姿勢がやや後退している状況を表しているように感じます。

 

 堅調に推移していると見られる製造業でも、半導体不足に足を引っ張られて自動車生産が低迷しており、自動車販売台数は5月が前年実績比3%減、6月は12%減と鈍化傾向にあります。

総じて見ると、前週論じた当局の締め付け強化などの政治的リスクに加え、資源高や半導体不足が重荷となり指標面でもやや陰りが伺え、警戒度を高める必要があると感じます。

 

短期的には資金の流動性が増したことで停滞していた中国株には後押しとなることが考えられますが、一方でこのタイミングでの緩和は不動産などの更なる高騰要因にもなる可能性があります。

次週は4-6月期の中国GDPの発表がありますが、資源高がどこまで影響しているか注視していきます。

 

以上

【6/28-7/2週の世界のリスクと経済指標】〜中国の締め付け姿勢強化と株価の低迷〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +4点(94点):良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化としました。

 

ワクチン接種が進みますが、中国製ワクチンの有効性が疑われ、欧米製ワクチンの需要が増加して再び不足となりそうな気配です。イギリスでは新規感染者数が反発し、米国では下げ止まりの兆候が見られるため再び警戒が必要となってきました。

 

中国では共産党創立100周年記念式典が行われ、台湾統一への意気込みや台湾や香港、新疆に対する外部勢力からの圧力に屈しないことが強調されました。

 

OECD参加国130カ国・地域が①最低法人税率を15%、②売上高200億ユーロ、利益率10%の企業へデジタル課税、とする内容に大筋合意しました。

これにより国家間の減税競争に終止符が打たれ、各国政府が企業(=投資家)からの税収を増やし、それを元に全ての国民に富の再配分を行える布石ができました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。

中国の製造業PMIは国家統計局、財新ともに前月より低下し4ヶ月振りの水準に低下し中国経済の伸び悩みを示しました。

 

米国の雇用統計は雇用者数が予想70万人に対して85万人と上振れで大きく増加する一方、失業率は予想5.7%に対して5.9%と悪化を示しました。

またISM製造業景況指数は予想61に対して60.6とやや下振れも60の高水準をキープし好調を示しました。

 

次週は米ISM非製造業景況指数や中国CPI、PPIの発表があります。

ISM非製造業景況指数は予想から大きく外れなければ株価への影響は薄いと思われます。

中国PPIは予想8.7%と急騰していますが、一方でCPIは1.3%と予想されています。PPIとCPIとのギャップがどのように反映されるか注目したいと思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は米雇用統計で雇用者数が予想に対して上振れして増加しましたが、金利は低下し株高となり、米株3指数は最高値を更新し週を終えました。

 

6月のFOMC以降、FRBタカ派転換でインフレが抑制されるとの観測から期待インフレが低下しました。そのため好調な指標となっても米長期金利が大きく上昇することなく、週を通して米株指数は堅調に推移しました。

またVIX指数も15と年初来の低下を見せボラティリティが低下したため、小刻みながら安定的な値動きとなりました。

6月の米CPIの急上昇で動揺した米市場ですが、FOMCを経て落ち着きを取り戻し、過熱でも冷え込みでもない適温な相場がしばらく続きそうな様相です。

 

 

〜中国の締め付け姿勢強化と株価の低迷〜

 一方で上海総合指数が2.46%安、香港ハンセン指数は3.34%安と中国株は強い下落を示しました。

先週は中国共産党の創立100周年記念式典が行われましたが、イベント期待から上昇していた中国株は先週に入り大きく下落しました。

 

今年に入り、中国当局は様々な資産に対して締め付け姿勢を強めています。

・アント、テンセント、JDドットコム、ディディなどの中国IT企業に対する統制強化

・商品価格への過度な投機や虚偽情報流布の禁止

住宅ローン担保証券の発行抑制

ビットコイン採掘禁止、大手銀行に仮想通貨の取引や使用を避けるように指示

 

特にアントの上場延期に端を発する中国IT企業への統制強化は、これまで自由に富と影響力を拡大してきたIT企業に対する共産党の支配確立を目指した動きが見え隠れします。

 

それを表してか、他の主要株価指数2021年に入ってからも順調に株価を伸ばしていますが、上海総合指数は0.45%しか上昇していません。

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また直近の財新製造業PMIも前月52から低下し51.3と4ヶ月振りの低水準となっています。

コマツは中国の建機需要が4月から減少に転じ始め5月は26%減となったと報じています。

参考:コマツ社長、中国の建機需要は想定以上に減少-市場は下降局面に

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-29/QVAV6ST0AFBJ01

 

中国は、純粋なインフレ抑制目的に加えて、政治的な目的によっての締め付け姿勢が強まっていることで実体経済もやや低下傾向にある気がします。

先日の共産党創立100周年の記念式典での習主席の演説において、11年、16年の記念演説と比較して「改革開放」というワードが大幅に減ったことも今後は民間主導から党主導での成長を目指す変化を示唆していると考えられます。

参考:習氏演説、「強軍」「強国」急増 「改革開放」は急減

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB014MV0R00C21A7000000/

 

私がポートフォリオの10%を投資するMSCIエマージングマーケット指数も、約40%の構成比率を占める中国株に引っ張られてMSCIコクサイにアンダーパフォームしています。

 

新興国景気を占う資源価格は既に高値圏にあり、中国株と共に今後もMSCIエマの伸び悩みが予想されるため、MSCIエマの割合を10%→5%へ減らして様子を見ることとします。そして先進国株式には少なくとも年内は適温相場が続く可能性が高いためMSCIコクサイに振り替えます。

この変更で私のポートフォリオは先進国株式(MSCIコクサイ)50%、JPモルガン5%、新興国株式(MSCIエマ)5%、J-REIT 10%、国内債券30%となります。

 

引き続き中国関連のニュースと中国景気を表すドイツ製造業PMIの推移に注目していきます。

 

以上