投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【6/28-7/2週の世界のリスクと経済指標】〜中国の締め付け姿勢強化と株価の低迷〜

先週の評点:

 

リスク   -4点(32点):悪化 (基準点36点) 

経済指標  +4点(94点):良化 (基準点90点)

 

 

【リスク】

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先週のリスクはマイナス4ポイントの悪化としました。

 

ワクチン接種が進みますが、中国製ワクチンの有効性が疑われ、欧米製ワクチンの需要が増加して再び不足となりそうな気配です。イギリスでは新規感染者数が反発し、米国では下げ止まりの兆候が見られるため再び警戒が必要となってきました。

 

中国では共産党創立100周年記念式典が行われ、台湾統一への意気込みや台湾や香港、新疆に対する外部勢力からの圧力に屈しないことが強調されました。

 

OECD参加国130カ国・地域が①最低法人税率を15%、②売上高200億ユーロ、利益率10%の企業へデジタル課税、とする内容に大筋合意しました。

これにより国家間の減税競争に終止符が打たれ、各国政府が企業(=投資家)からの税収を増やし、それを元に全ての国民に富の再配分を行える布石ができました。

 

 

【経済指標】

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先週の経済指標はプラス4ポイントの良化となりました。

中国の製造業PMIは国家統計局、財新ともに前月より低下し4ヶ月振りの水準に低下し中国経済の伸び悩みを示しました。

 

米国の雇用統計は雇用者数が予想70万人に対して85万人と上振れで大きく増加する一方、失業率は予想5.7%に対して5.9%と悪化を示しました。

またISM製造業景況指数は予想61に対して60.6とやや下振れも60の高水準をキープし好調を示しました。

 

次週は米ISM非製造業景況指数や中国CPI、PPIの発表があります。

ISM非製造業景況指数は予想から大きく外れなければ株価への影響は薄いと思われます。

中国PPIは予想8.7%と急騰していますが、一方でCPIは1.3%と予想されています。PPIとCPIとのギャップがどのように反映されるか注目したいと思います。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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 先週は米雇用統計で雇用者数が予想に対して上振れして増加しましたが、金利は低下し株高となり、米株3指数は最高値を更新し週を終えました。

 

6月のFOMC以降、FRBタカ派転換でインフレが抑制されるとの観測から期待インフレが低下しました。そのため好調な指標となっても米長期金利が大きく上昇することなく、週を通して米株指数は堅調に推移しました。

またVIX指数も15と年初来の低下を見せボラティリティが低下したため、小刻みながら安定的な値動きとなりました。

6月の米CPIの急上昇で動揺した米市場ですが、FOMCを経て落ち着きを取り戻し、過熱でも冷え込みでもない適温な相場がしばらく続きそうな様相です。

 

 

〜中国の締め付け姿勢強化と株価の低迷〜

 一方で上海総合指数が2.46%安、香港ハンセン指数は3.34%安と中国株は強い下落を示しました。

先週は中国共産党の創立100周年記念式典が行われましたが、イベント期待から上昇していた中国株は先週に入り大きく下落しました。

 

今年に入り、中国当局は様々な資産に対して締め付け姿勢を強めています。

・アント、テンセント、JDドットコム、ディディなどの中国IT企業に対する統制強化

・商品価格への過度な投機や虚偽情報流布の禁止

住宅ローン担保証券の発行抑制

ビットコイン採掘禁止、大手銀行に仮想通貨の取引や使用を避けるように指示

 

特にアントの上場延期に端を発する中国IT企業への統制強化は、これまで自由に富と影響力を拡大してきたIT企業に対する共産党の支配確立を目指した動きが見え隠れします。

 

それを表してか、他の主要株価指数2021年に入ってからも順調に株価を伸ばしていますが、上海総合指数は0.45%しか上昇していません。

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また直近の財新製造業PMIも前月52から低下し51.3と4ヶ月振りの低水準となっています。

コマツは中国の建機需要が4月から減少に転じ始め5月は26%減となったと報じています。

参考:コマツ社長、中国の建機需要は想定以上に減少-市場は下降局面に

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-29/QVAV6ST0AFBJ01

 

中国は、純粋なインフレ抑制目的に加えて、政治的な目的によっての締め付け姿勢が強まっていることで実体経済もやや低下傾向にある気がします。

先日の共産党創立100周年の記念式典での習主席の演説において、11年、16年の記念演説と比較して「改革開放」というワードが大幅に減ったことも今後は民間主導から党主導での成長を目指す変化を示唆していると考えられます。

参考:習氏演説、「強軍」「強国」急増 「改革開放」は急減

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB014MV0R00C21A7000000/

 

私がポートフォリオの10%を投資するMSCIエマージングマーケット指数も、約40%の構成比率を占める中国株に引っ張られてMSCIコクサイにアンダーパフォームしています。

 

新興国景気を占う資源価格は既に高値圏にあり、中国株と共に今後もMSCIエマの伸び悩みが予想されるため、MSCIエマの割合を10%→5%へ減らして様子を見ることとします。そして先進国株式には少なくとも年内は適温相場が続く可能性が高いためMSCIコクサイに振り替えます。

この変更で私のポートフォリオは先進国株式(MSCIコクサイ)50%、JPモルガン5%、新興国株式(MSCIエマ)5%、J-REIT 10%、国内債券30%となります。

 

引き続き中国関連のニュースと中国景気を表すドイツ製造業PMIの推移に注目していきます。

 

以上