投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2023年9/4-9/8週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  +3点(30点):良化 (基準点27点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週はインドでG20首脳会議が開催されましたが、プーチン大統領習近平主席が参加せず、世界平和にとって重要なポジションにある2カ国の首脳が参加しない、機能不全を露呈した会議となりました。議長国のインドはグローバルサウスの代表としてG20サミットの成功に並々ならぬ意欲を燃やし、AUアフリカ連合)のG20に合意するも、存在意義の低下が深刻となっています。

 

 また先週はASEAN首脳会議も開催されましたが、開催直前に中国政府より発表された新地図について、反発が見られジョコ・インドネシア大統領は「国際法を遵守すべき」と中国代表の李強首相に苦言を呈しました。一方で、日本に対しては日ASEANの関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明を発表しました。ASEANとの関係性において明暗の別れた会議となりました。ただ、米国もバイデン大統領が今回も参加を見送り、代わりに派遣されたハリス副大統領は何も存在感を示せないまま終了したことから、米国とASEANの関係性も停滞が続いたままとなっており、こちらもこちらで課題が残っています。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス3ポイントの良化となりました。先週は重要指標の発表が少なかったですが、中国のサービス業PMIが低下を示した一方で、米国のISM非製造業景況指数は上昇を示し、米国景気の底堅さが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね低調となりました。

米国株は長期金利の上昇を背景にナスダックが大きく下げたことに加え、中小型株で構成されるRussell2000も大きく下げました。Russell2000の下げは、中小企業での金利上昇による資金調達コストの上昇や、収益そのものの低下が懸念されていると推測されます。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

・企業の大量の社債発行が重しとなり長期金利が上昇。

・ISM非製造業景況指数が予想52.5に対して54.5と予想外に上振れし、高水準の金利維持の観測が高まる。

・中国政府が中国国内でのiphoneの使用制限を拡大することを発表し、AAPLが大幅反落。それに連れてハイテク株も反落。

 

 先週はLabor day後の社債発行ラッシュにより、米国債からより利回りの高い社債への切り替えが発生し、米長期国債に売り圧力がかかったため長期金利が上昇しました。加えてISM非製造業景況指数が予想外の上振れを見せ、かつ雇用指数も54.7と22年11月以来の高水準となったため、FRB金利水準を高いまま維持する観測が高まりました。

 また先週は中国政府が政府職員や国有企業などの職員に対してアップル製品を使用しないように命じたとの報道により、AAPLの株価が急落しました。中国国外への機密情報の流出を防ぐためと言われていますが、未だに自国内で多く製造されており、経済を支えているはずの製品を締め出す姿勢はサプライズとなり、株価の下落を招きました。

 

 上記のiphoneに対する措置のように、ここ最近、中国政府の既存の経済的、政治的な関係からの離脱に拍車がかかっている印象です。G20サミットではバイデン米大統領が米中首脳会談を呼びかける中、習近平主席は出席しませんでした。G20はG7などの西側諸国が多く参加する会議であり、中国に対立姿勢を取る欧米諸国と議論しても意味がないと軽視している様子が見て取れます。

 逆に8月末に行われたBRICS首脳会議には、わざわざ南アフリカまで足を伸ばして習主席自ら参加しています。BRICSには新たに強権政治的な6カ国を追加しその勢力を拡大しています。中国政府としては、決して折り合うことのない西側と不毛な議論をするよりも、反欧米の新たな枠組みで議論した方が有益だと考えているのでしょう。

 

 さらに中国政府はこれまで秋波を送っていたASEAN諸国に対しても、態度を変えてきた印象があります。G20サミットの前にASEAN首脳会議がありましたが、その直前に「新地図」を発表し、ASEAN諸国と国境問題を抱える地域を自国領土・領海として示しました。このタイミングでの発表は明らかな挑発行為です。

 

 これらから推測されるのは、BRICS上海協力機構など自らが主導する地域を超えた枠組みの拡大による、政治的、経済的な対立を抱える欧米諸国や、国境問題を抱える近隣諸国であるASEAN諸国との相対的な関係性の重要度の低下です。

中国には反欧米的な強権国家で結束された新しい枠組みがあり、そこでは自らが主導権を握り新しい秩序を生み出せる可能性があります。そこから来る自信が中国を従来の枠組みから自立させ、協調性を失わせているのだと思います。この傾向は今後も続くと思われ、対話の機会が失われていくことから、偶発的な衝突が懸念されます。

 

 ISM非製造業景況指数は予想外の上振れがありましたが、サマーシーズンのリベンジ消費でホテルやレジャー施設などで一時的に上昇した可能性もあり、少し様子を見る必要があると思います。また原油の上昇も同様の理由も考えられますが、サウジとロシアが減産を続けていることも影響しているため、その推移には注意する必要があります。

ただ、ファンダメンタルズ的には今のところ大きな変化とは捉えられず、引き続き強気のポートフォリオを維持します。

 

以上

【2023年8/28-9/1週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   1点(31点):小幅良化 (基準点30点) 

経済指標  -3点(112点):小幅悪化 (基準点115点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス1ポイントの小幅良化となりました。

先週は米国のレモンド商務長官が訪中し、李強首相や王文濤商務相などの中国政府高官と相次ぎ会談しました。半導体関連の輸出規制を中心とした対立が続く米中ですが、対中輸出を行う米国企業にも影響が出ています。今回の訪問はその緩和に向けて米中間の経済的な対話を再開させるためのものと考えられ、米国側が歩み寄った形となっています。中国は西側への輸出拡大での景気悪化からの回復、米国は24年の大統領選での支援に向けた経済界への配慮、が見え隠れしますが、いずれにせよ米中が歩み寄りを見せるのは偶発的な衝突を避けることにも繋がります。

またここに来て英国も米国同様クレバリー外相が訪中し、王毅外相と会談し、西側諸国の対中関係の緩和が目立ちます。

 

一方で中国が先週公開した自国の新しい領土や領海を示した新しい地図が、国境問題を抱えるアジア諸国の領地を自国領と示したことで反発を呼んでいます。従来は九段線だった領海地図も十段線に拡大しており、南シナ海のほぼ90%が中国の権益が及ぶとされています。9/5-7にかけてインドネシアASEAN関連首脳会議が行われますが、その直前での物議を醸す発表に、ASEAN会議での中国の動向に注目が集まります。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス3ポイントの小幅悪化となりました。

先週は米国の重要指標が目白押しでしたが、雇用統計を始めとしてJOLTS求人件数など雇用系の指標は概ね悪化を示し、雇用過熱の落ち着きが示されました。

一方で7月PCEデフレーターは予想に一致も前月の3.0%から3.3%へと再び加速を示しました。またISM製造業景況指数も予想47.0に対して47.6と基準となる50は割れつつも回復を示しました。特に雇用指数は予想44.2に対して48.5と強さを示し、まだ粘り強さも残っていることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は堅調に推移しました。主要株価指数は全て大幅反発となりました。

先週はこれまで反落を続けていた中国株も、中国政府の打ち出した政策により4週ぶりに反発となりました。

 

先週の米国株式指数の動きの要因は下記の通りです。

・米7月JOLTS求人件数、消費者信頼感指数が大幅に下振れ。また4-6月期GDPも下方修正。経済指標が悪化を示してFRBの利上げ継続の観測が後退。

・8月雇用統計でNFPは18.7万人と上振れも失業率が3.8%に上昇、平均時給も0.2%と低下し雇用の落ち着きが見られる。

 

 先週は二つの側面から雇用の引き締まりの緩和が確認されました。

一つは需要サイドからの緩和です。7月JOLTS求人件数では予想946.5万件に対して882.7万件と21年3月以来の900万件割れとなりました。22年3月をピークに減少トレンドは続いていましたが、6月分も958.2万件から916.5万件に改定され、ここ数ヶ月でトレンドが明確になってきた印象です。

 

 一方、雇用統計からは供給サイドからの引き締まりの緩和が確認されました。

注目したのは労働参加率です。労働参加率は2022年初めから62%~62.6%の間で推移していましたが、8月雇用統計では労働参加率が62.8%となり、コロナ前の2020年2月以来の数値が示されました。この背景にはこれまで働くことを拒んできていた人々が、いよいよ働かざるを得ない状況になってきていることがあると考えます。

 31日に発表された米国の貯蓄率は前月の4.3%から3.5%に低下し、コロナ禍の現金支給で増えた米国人の過剰貯蓄がほとんど解消されつつあります。またここ最近の傾向としてクレジットカード債務残高が増加しており4-6月期の残高は過去最高の1兆ドルを超え、かつ延滞率も増加しています。

これまでコロナ禍での手厚い給付金により、サポートされていた人々が貯蓄率の低下とクレジットカード債務の増大により、労働市場に戻ってき始めたと考えられます。

 

 つまり需要サイドでは利上げの影響から徐々に景気過熱が落ち着いて来ており、かつ供給サイドでも供給制限が解決に向かって来ており、雇用需給の両方から過熱改善の兆候が見られます。また失業率は3.8%に上昇し、平均時給は0.2%と低下しています。NFPが予想17.0万人よりも上振れし18.7万人となりましたが、同時に7月は18.7万人→15.7万人、6月も18.5万人→10.0万人に下方修正されていることから下振れする可能性が高く気にする必要は薄いと思います。

これまで粘り強さを見せていた雇用ですが、急激に悪化することなく、ゆっくりと順調に鈍化傾向を示していると言えると思います。

 

雇用統計後にはISM製造業景況指数が上振れたため、雇用統計でのポジティブを打ち消し、株価は伸びませんでしたが、ファンダメンタルズは良好な状態を維持していると思います。

引き続き株価50%の強気のポジションを維持します。

 

以上

【2023年8/21-8/25週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -4点(50点):悪化 (基準点54点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週は南アフリカBRICSの首脳会議が開催され、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビアUAEの6カ国の加盟が認められました。グローバルサウスとして連携を拡大するのは良いですが、西側諸国としては、それが中露に主導されているのが気がかりです。中露は明らかに欧米諸国に対する対立軸として連携を深めていると見えます。しかし、インドやブラジル、サウジなどの反欧米とは言えない国々までもがそこに加わっており、今後どのような動きをしていくのか注目されます。

 

 また日本政府が福島原発の処理水の海洋放出を開始したことを受けて、中国政府が日本産の海産物の全面輸入禁止を発表しました。中国に対する日本の半導体製造装置の輸出規制への揺さぶりとしての要素もあると思いますし、自国経済の低迷の矛先を外的に向ける、いつもの中国の常套手段のような気がします。ただ、中国国内では日本人に対して投石騒ぎも行っているとの報道もあり、2012年の尖閣諸島国有化後の様に市民レベルでの関係の悪化と、日本企業の中国内でのビジネス環境の一段の悪化が心配されます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス4ポイントの悪化となりました。

先週は欧米各国のPMIの発表がありました。欧州は製造業PMIでは低水準の中でわずかに改善が見られたものの、非製造業においても悪化が顕著になってきました。特にドイツでは前月52.3から一気に47.3まで低下し、主力の製造業での景況感の悪化が非製造業まで急速に波及してきたことが伺えます。

中国経済の低迷も合わさり、景気悪化が著しい欧州ですが、インフレ率はまだ高水準となっており金融緩和には踏み切れず、苦しい状況が続いています。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数はまちまちながら、NVDAの決算期待に連れてハイテク株を中心に反発しました。それを受けてナスダックが2.26%の大幅反発となりました。一方で中国は、中国人民銀行が1年物LPRの追加利下げを行なったものの住宅ローンの目安となる5年物は対象とされなかったための失望を誘い反落が続きました。また中国政府が国内の景気悪化からの株安を防ぐために、一部投資基金に対して売り越さないように要求したことで悲観的な見方が強いことが示され軟調を強めました。

 

 先週の米国株価の動きの要因は下記の通りです。

・AIブームの期待感の高まりからNVDA株が伸長し、また実際の決算発表でも好決算を示す。

ジャクソンホールにてパウエル議長が従来と変わらない、サプライズなしの姿勢を示したことで安堵感。

 

 先週はNVDAの決算発表があり、売上高は予想112.2億ドルに対して135.1億ドル、EPSは2.09ドルに対して2.7ドルと驚異的な業績を叩き出しました。特にAI需要の高まりからデータセンター向けの売上高が103億ドルにも達し、1Qの42.8億ドルから倍増していることが示されました。また3Qの見通しも市場予想の126億ドルに対して160億ドルとこちらも大幅に増加することが示されました。

 ChatGPTに代表されるようなAIの活用拡大とNVDAの1Q決算から、5月から「テーマ」としてのAI株が市場を牽引してきました。今回、再びNVDAの急速な業績の拡大が示されたことで、単なるテーマではなく実際に需要が拡大している分野であることが示されました。恐らくNVDAの大半の需要を形成しているのは資金力のあるGAFAMなどの大手ハイテク企業であることが予想されます。しかし常にイノベーションを成し遂げてきた彼らが競って投資をしているということは、AIが今後人類の生活を変革し、ビジネスとして成功する可能性が高いということを示唆していると思います。決算発表後にNVDA株は下げていますが、これは期待感から上がりすぎた反動であり、中長期トレンド的にはAIによりブーストされ大手ハイテク株が上昇を続ける可能性が高まってきたと思います。

 

 一方で、短期的にも大手ハイテク株主導で株価が上昇し続けるのかと言われると、それはやや懐疑的です。前週から米国の長期金利が上昇傾向にあり、10年債利回りは一時4.36%まで上昇しました。金利が高止まりすればハイテク株には重しとなります。また中立金利の引き上げ論も出ていますが、それを語るにはまだ論拠が薄いと思われます。

 ジャクソンホールでは、パウエル議長が7月FOMCでのスタンスと変わらず、追加利上げの是非について「慎重に政策を進めていく」スタンスを強調すると同時に、引き締め政策がより長期に及ぶ可能性も示唆しました。既にマーケットが織り込み済みの内容であったため株式は無難に反発しましたが、どちらかというと想定外のタカ派姿勢が出なかったことに対する安堵感が強かったように思われます。

 やはりFRBが利上げを確実に停止し、利下げが見えてこない限りは、株価が次のステージへと上抜けるのは難しいと思います。ナスダックは14400ポイント、S&P500は4600ポイントの直近高値を上限にフラフラする展開が続くと思われます。

 とは言え、インフレ率は確実に下がり、利上げはあと一回あるかどうかというところまで来ており、時間の問題だと思われます。ついては引き続き株式50%の強気を維持します。

 

以上

【2023年7/31-8/4週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -15点(104点):大幅悪化 (基準点119点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立となりました。

先週はEUのフォンデアライエン委員長がフィリピンを訪問し、マルコス大統領と会談しました。会談では中国を見据えた海上安保での協力強化が表明されました。また経済面では欧州とフィリピンのFTA締結への取り組みも表明され、EUのインド太平洋での関与が強まりました。欧州主要国である仏独は中国への配慮からインド太平洋地域への関与に対して最近消極的ですが、NATOEUなど欧州全体としては引き続き積極的な印象です。EUには仏独の消極姿勢に引っ張られず、引き続きインド太平洋地域への関与を継続して欲しいところです。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

米ISM製造業景況指数、非製造業景況指数は共に低下し景気の落ち着きが示されました。また雇用統計も失業率と平均時給は強めに出た一方でNFPは低下を示しまちまちな結果となりました。

豪準備銀行は利上げが予想されていた中、サプライズで据え置きを発表しました。中国需要の鈍化もあり、景気後退リスクが懸念されていることが示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株式指数は上海総合指数以外は軟調となりました。米3指数も大幅に調整し、米ナスダックは2.85%安となりました。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

・ISM景況指数が製造業、非製造業共に下振れて景気の悪化が示される。

・フィッチの米国債の格下げやADP雇用統計が強く出たことで長期金利が上昇。

・雇用統計でNFPが予想を下回ったことで長期金利は低下し、またAAPLの決算で売上高をミスしたことで景気悪化が意識される。

 

 先週は米長期金利が大きく動き、株式市場を振り回しました。元々、前週の日銀のYCCの柔軟化に連れて長期金利が上昇しやすい状況でしたが、フィッチが米国債の格下げしたことや、米国債の四半期定例入札での中長期債の発行額引き上げが発表され債券が売られました。加えてADP雇用統計が予想18.9万人に対して32.4万人と強目に出たため、米景気の先行きの堅調さも意識され長期金利が大幅に上昇しました。

 

 一方で金曜日に発表された雇用統計では失業率は3.5%、平均時給が0.4%と強さを見せたものの、NFPは下振れて18.7万人、前月の数値も下方修正されて18.5万人となりました。NFPは2ヶ月連続で20万人を切っており、雇用も確実に弱含んできていることが示されました。加えてこれまで市場を牽引してきたAAPLの決算で主力のiphoneの売上が主に米国で減少したことを受けて、景気悪化も意識されました。それにより一時4.2%まで上昇していた10年債利回りは急降下し、4%近辺まで一気に戻しました。

 

 先週のこの長期金利の動きは、景気の堅調さと弱さが混ざり合っていることで軟着陸かリセッションか、掴みどころのない状況に迷っているマーケットの様子を表していると思います。労働市場はまだ堅調さを保っていますが、ISMは製造業は50割れが続き、非製造業も徐々に数値を下げています。またこれまでの米企業決算も強弱まちまちな傾向もあります。優等生だったAAPLやMSFTが決算発表後に売られる一方、期待が薄かったMETAやAMZNなどが買われるなど何とも言えない中途半端な雰囲気が漂っています。

 

その不透明感の表れか、株価指数金利が上昇しても売られ、金利が下落しても売られと大幅に反落しています。S&P500が節目の4500を挟んでフラフラしていることからも、やはり利下げが明確に見えてくるまではここから上には抜けきれない状況が続くのではないかと思われます。

とは言え、ファンダメンタルズとしては、景況感は悪化し雇用もNFPは確実に低下してきており、徐々にではありますが、確実にインフレ鈍化の方向に向かっています。つまりはFRBが望んでいる通りの軟着陸に向かっており、FRBから利上げ停止のアナウンスがされる日もそう遠くはないと思います。

それを期待して引き続き株式50%の強気を維持します。

 

以上

【2023年7/24-7/28週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   0点(30点):中立 (基準点30点) 

経済指標  -15点(104点):大幅悪化 (基準点119点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラスマイナスゼロの中立となりました。

先週はオースティン米国防長官がパプアニューギニアを訪問し、5月に締結された防衛協定の運用についてマラベ首相と議論を行いました。協定は15年間有効でパプアの海軍基地や空港、港湾などの6拠点を使用できるようになっている模様です。小笠原諸島から連なる第二列島線に位置するパプアはインド太平洋地域では要衝であり、ソロモン諸島に接近する中国を牽制するためにも、米国の関与が強まっていることは重要です。また同時にブリンケン国務長官もトンガを訪問し、トンガ首相と会談し両国関係の強化を議論しました。米国はトンガに新たに大使館も開設しており、中国に対抗するためにインド太平洋地域での外交活動を広げています。

 

 一方で中国では、その外交を司る秦剛外相が原因不明のまま突如解任されました。前任の王毅氏が外相に復帰することとなったため、外交自体は問題ないと考えますが、駐米大使を経験し知米派であった秦剛氏の解任は様々な憶測を呼びます。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス15ポイントの大幅悪化となりました。

欧州PMIは軒並み悪化が見られ、特にドイツの製造業PMIは38.8と欧州の急速な景気悪化が示されました。

それを受けてECBの政策金利発表では予想通り25bpsの利上げとなったものの、急速な景気悪化からか、「今後はデータ次第」と利上げ停止を見据えた発言に変わってきました。

 米国のFOMCでも予想通り25bpsの利上げとなりましたが、今後の利上げは「データ次第」との見解が示されました。PCEデフレータも前月3.8%から3.0%に低下し、コア指数は予想4.2%に対して4.1%と下振れも示されました。

 

次週は米ISM景況指数と雇用統計があります。雇用統計では、予想値では堅調な値が出ることが予想されていますが、堅調なのかそれとも利上げの影響から悪化が示されるのか注目したいと思います。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね堅調に推移しました。特に上海総合指数や香港ハンセン指数などの中国株価は、中国共産党が中央政治局会議を開催し、下半期に景気刺激策に動くとの期待が浮上し大幅に反発しました。

 

先週の株価の動きの要因は下記の通りです。

FOMCにて25bps利上げも、今後の利上げに関しては「データ次第」で予想通りとなり無難に推移。

・MSFTが見通しが悪く下げるも、GOOGL、METAが好調な決算でテック系の回復が鮮明。

・日銀金融政策決定会合で買いオペ上限が0.5%→1%に変更されるもYCCは継続方針で不透明感が後退。

・米PCEデフレータ、コアデフレータが共に鈍化を示しインフレ低下を確認。

 

 先週はFOMCがありましたが、25bpsの利上げで事前の予想通りとなりました。また今後の利上げについても「データ次第」とフォワドガイダンスは示されませんでした。FRBとしてはインフレ目標2%は届いていないため利上げ余地を残していますが、マーケットは最近のインフレ率の低下から今回での利上げ停止を織り込んでいるため特にネガティブな反応とはならなかった印象です。

 

 また先週はYCC修正を巡って日銀金融政策決定会合に注目が集まりました。日銀はYCCの枠組みは変更せず緩和を継続しながらも、現行はYCC上限の0.5%としている指値オペの利回りを1%に変更しました。発表直後はドル円が138円前半までの円高日経平均は2%安と株安となりましたが、NY時間も含めて週を終えてみるとドル円は141円前半、日経先物も1%高となり市場は無難に織り込んだ印象です。

 

 今回の修正は1%が事実上の金利上限となるため、パッと見は「引き締め」とも捉えられる内容でした。しかし、現行YCCの上限は0.5%で変更せずにアナウンスメント効果は維持しています。今回修正した金利上限0.5%超えの容認は、あくまでも既に到達しているその水準で無理に抑えつけることをやめて市場経済の自律性を復活させることが目的です。また指値オペを巡った投機筋との無駄な対決を避けるためのものと解釈できます。そういう意味では今回の政策変更は、YCCの枠組みが外圧により破綻させられない様にするための柔軟化であり、これにより日銀がよりYCCを継続しやすくなったと理解できます。

 

 それが、「日銀は長期的に金融緩和を継続していく」というメッセージとして捉えられ、発表当初の円高株安から反転して円安株高に繋がったと考えられます。やや複雑な内容で解釈に時間がかかりましたが、こうして落ち着いて考えると、今回の日銀の政策変更は、現在考え得る最良の政策だったのではないかと思います。

今後の植田新総裁の手腕に期待します。

 

 米国では、比較的好調なハイテク企業の決算や4-6月GDPの上振れを背景に、景気をある程度維持しながらインフレが落ち着く「軟着陸」の観測も再び出始めました。

FOMC、日銀金融政策決定会合を無難に通過したこともあり、引き続き株式50%の強気のポートフォリオを維持します。

 

以上

【2023年7/10-7/14週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   2点(32点):良化 (基準点30点) 

経済指標  1点(58点):小幅良化 (基準点57点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはプラス2ポイントの良化となりました。

世界的に大きな課題となっているインフレにおいて、影響力の大きい米国での鈍化が顕著になってきました。米国のインフレは、米国民のみならず、米金利高からの自国通貨安により新興国の人々の生活も苦しめてきました。それがインフレが順調に鈍化してきたことが何よりも大きな改善となりました。

 一方で、中国ではCPIが0%で物価が上昇していないことが示され、デフレの瀬戸際にあることが示されました。ゼロコロナからの復活が期待された中国ですが、回復しない不動産価格や分断による輸出減、当局による企業への介入などの様々な理由により低迷が続いています。中国当局による景気刺激策も期待されていますが、今のところは明確な方針が示されていません。

 

【経済指標】

 先週の経済指標はプラス1ポイントの小幅良化となりました。

先週は中国のCPI、PPIが低調に推移したことや、中国向けの輸出が多い欧州の景気指数が低下し、中国経済の停滞が示されました。

一方で米国のCPI、PPIでは明確に鈍化が示され、加熱し過ぎたインフレが明確に落ち着きを見せました。

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数も概ね堅調に推移しました。日経平均は、ドル円が週間で3.34円も円高となったことで、米国株式に連れ高とならず横ばいとなりました。一方で中国のCPIが低迷したことで、中国当局の景気刺激策への期待感から香港ハンセン指数は大幅に反発しました。

 

先週は米CPIを中心に相場が大きく動きました。

米6月CPIは前月4.0%、予想3.1%に対して3.0%、コア指数も前月5.3%、予想5.0%に対して4.8%と下振れとなりました。昨年6月のピークとなった大幅上昇が計算に入らなくなったことも寄与していますが、コア指数は前月比でも前月0.4%、予想0.3%に対して0.2%と下振れし、インフレの順調な鈍化が示されました。

 それを受けて2年債利回りは前週末比で一時0.343%も低下し、また9月FOMCでの利上げ確率も低下しました。利上げの早期停止を織り込んだ株式市場は伸長し、S&P500は節目の4500ポイントを上抜けました。

 

 前週に出た雇用統計では平均時給が年率換算で4.4%の上昇と示されていました。先週示されたCPIと比較すると、コア指数は4.8%とあとわずか0.4%差、またサービス業の実情を表す数値であるスーパーコア指数に至っては前年比4%となり、平均時給の伸びを下回ってきました。

(総合指数はもっと低い3%となりましたが、エネルギーのマイナスの影響が大きいため、額面通りに比較することは難しいと判断し除外します。)

これらは言い換えるとサービス業の物価=企業の収益の伸びよりも従業員の給与の伸びが上回り始めているということです。これまでは、高い従業員給与の伸びをより高い物価の伸びが吸収してきました。しかし、それが逆転したことで今後は従業員給与が企業収益を圧迫し、企業が従業員の雇用を控えるようになる可能性が高くなると考えます。

 

 前週のアウトプットでも分析したように、これまで粘着的に強さを残していた雇用でしたが、既に黒人やヒスパニックなどのサービス業を担うマイノリティの失業率の悪化が認められます。平均時給の伸びよりも物価の伸びの方が低くなったことで、今後マイノリティの雇用が減少する傾向は強まる可能性が高く、インフレもそれと共に鈍化を強めると思います。

再来週に行われるFOMCでは利上げが既定路線となりますが、9月FOMCは、あと2回のCPIの発表があるため、これ以上利上げしない可能性も高いと考えます。

ついては引き続き株式50%の強気のポートフォリオを継続します。

 

 話は変わり、米国企業の2Q決算発表が始まりましたが、売上高、EPSが予想を上回りながらも値下がりもしくは伸び悩みを見せた銀行株が気になります。JPM、WFCは一時は2.7%高、3.66%高まで伸びたものの売り戻りで終値では0.6%高、0.34%安となり、Citiに至っては4%安となりました。商業用不動産ローンに対しての貸倒引当金の積み増しなど、不透明な先行きが嫌気されたと考えられますが、景気敏感関連はやや売られやすくなっているような気がします。今回の決算で株価が更に上昇するにはAIテーマに支えられたGAFAMにNDVAとTSLAを加えたMagnificent Sevenの決算次第のような気がします。19日のTSLAから始まるMagnificent Sevenの決算発表にも注目します。

 

<Magnificent Sevenの決算発表予定>

7/19 TSLA

7/25 GOOGL

7/26 META

7/27 MSFT、AMZN

8/3 AAPL

8/23 NVDA

 

以上

【2023年7/3-7/7週の世界のリスクと経済指標】

先週の評点:

 

リスク   -3点(27点):悪化 (基準点30点) 

経済指標  -11点(82点):大幅悪化 (基準点93点)

 

 

【リスク】

 先週のリスクはマイナス3ポイントの悪化となりました。

先週はイエレン財務長官が訪中して李強首相と会談し半導体規制に関して対話しましたが、どちらかというと米国側が熱心に働きかけており、特に進展していない印象です。逆に中国はイエレン氏訪問前に、8月からのガリウムゲルマニウムなどの希少鉱物に対する輸出規制を発表し、敢えて拒絶の意を示しているような印象です。中国としては米国が日本やオランダと行なっている半導体規制を緩和しない限りは軟化しない印象で、それなしにどこまで歩み寄りができるか不透明な状況です。

 また、先週は玉城沖縄県知事河野洋平元議員らと共に中国を訪問しました。玉城知事は李強首相と会談するなど、一知事としては異例の厚遇を受けました。台湾問題に関与を強める日本政府を揺さぶるために、中国当局が米軍基地の重要拠点となる沖縄県との関係強化に努めている印象です。この時期に敢えて中国との関係強化に努める玉城知事の意図が見えませんが、今後沖縄に対する中国の直接的な関与が増える可能性もあり、注意が必要だと思います。

 

 

【経済指標】

 先週の経済指標はマイナス11ポイントの悪化となりました。

中国のPMIは製造業、サービス業共に低下が示されました。特にサービス業の低下が顕著で、国内景気がなかなか戻ってこないことが示されました。

一方で米国のISM非製造業景況指数は前回50.3から53.9に回復し、ADP雇用統計、雇用統計も概ね強い数値が示され、強い米国景気が示されました。

 

 

【先週のマーケットの振り返りと考察】

 先週の株価指数は概ね軟調となりました。特に景気回復の遅れが見られる中国の香港ハンセン指数と中国経済の影響が大きい欧州株式指数が大きく売られました。

 

先週の株式の動きの要因は下記の通りです。

 

FOMC議事要旨で大半の当局者が追加利上げが必要と予想していたことが判明し金利が上昇。

・ADP雇用統計、ISM非製造業景況指数が大幅上振れ、引き締め継続観測が強まる。

・雇用統計でNFP下振れも平均時給は上振れ、失業率は下振れとなり次回FOMCでの利上げ観測が高まる。

 

 先週はFRBの利上げ継続観測に注目が集まったことで、金利が上昇し相場が調整しました。

まず水曜日に発表された6月FOMCの議事要旨で、ほぼ全ての当局者が6月の金利据え置きで支持した一方、大半が今後の追加利上げが必要となると予想していたと判明し金利が上昇を始めました。

 続く木曜日に発表されたADP雇用統計では前回26.7万人、予想22.8万人に対し49.7万人と強く上振れし、ISM非製造業景況指数でも予想51に対して53.9と上振れしました。この雇用と景気の底堅さを受けて金利上昇がさらに進み10年債利回りは4%、2年債利回りは5%を突破する動きとなりました。

 また金曜日の雇用統計では、NFPが予想22.5万人に対して20.9万人で下振れしましたが、平均時給は予想0.3%に対して0.4%と上振れ、失業率は3.7%から3.6%に低下し根強い雇用の強さも示されました。これらの雇用や景気の強さがFRBの追加利上げ姿勢を後押しし、金利の上昇と株価の反落が継続しました。

 

 一方で今回の雇用統計では平均時給の上昇と失業率の低下が利上げを支持することになりましたが、失業率の内訳を見てみると雇用も弱含み始めている兆しも見えます。下記は人種ごとの失業率の推移を表したものです。

 6月の白人の失業率は前月3.3%から3.1%に低下していますが、サービス業の多くを担う黒人やヒスパニック系の失業率は4月を底に上昇を見せています。全労働人口の66%を占める白人の失業率低下により全体失業率が押し下げられたと考えられますが、サービス業従事者の多い低所得層では確実に失業率が上がっています。また平均時給の上昇も高所得者の多い白人層が強かったことが原因と考えられます。つまり、低所得者が多いサービス業での雇用の減少傾向も漸く始まったと考えられ、今後必然的に失業率全体や平均時給も落ち着いてくるものと考えられます。

 

 先週は10年債利回りがこの1週間で0.225%(5.86%高)も上昇した一方で、株価の調整は限定的だったような印象です。恐らく株式市場は、この辺りのサービス業での雇用の緩みも織り込んでいるのではないかと考えます。そしてあと2回利上げがあろうが、景気が強さを保ちながらゆっくりと悪化し、それと同時にインフレ率が下がっていくことを想定しているのだと思います。また私もその可能性が高いと感じています。

 

 従って次週も引き続き強気のポートフォリオを維持したいと思います。

 

 尚、先週は金利が上昇する中でも円高となり、ドル円は2.25円高(1.56%高)となりました。これは雇用統計でNFPが予想を下回ったことと、10年債利回りが4%を上回ったことで日銀が円買い介入する可能性が高まり、ショートカバーで売りが増えたものだと考えられます。まだ利上げ観測が残っている中では円安基調は崩れていないと思いますが、為替リスクを負う資産が

多いだけにこちらも値動きに注視したいと思います。

 

以上