投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【1/25-1/29週の世界のリスクと経済指標】~株式市場へと形を変えて噴出する格差への不満~

先週の評点:

 

リスク   -9点(33点):大幅悪化 (基準点42点) 

経済指標  +4点(76点):小幅良化 (基準点72点)

 

 

【リスク】

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先週はマイナス9ポイントの大幅悪化としました。

COVID-19の新規感染者数は、欧米では明らかにピークを超えつつありますがついに1億人を超えました。

一方で世界的なワクチン需要に対して供給が追いつかず、混乱が広がっています。

EUアストラゼネカからの供給量が契約より遅れることを激しく非難しました。そして今後EU域内からのワクチンの輸出には事前承認が必要となる規制をかけることを発表しました。富裕国のみがあからさまにワクチンを独占しようとする状態を露わにしたことによりモラルを問われると共に中国、ロシアが新興国へのワクチン外交でより関係を深める機会を与えています。

 

また、米新政権の閣僚が承認されるにつれて徐々に中国への強硬姿勢が示されるようになりました。台湾を巡っては前政権の流れを引き継ぐ姿勢を示し、ウイグル弾圧問題も改めて「ジェノサイド」との認識を示しました。

それに対し中国も反発の姿勢を見せています。

 

【経済指標】

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 先週はプラス4ポイントの小幅良化としました。

FOMCでは足元では業績が好調な企業も目立ちますが、政策金利は据え置き、債券買い入れの緩和政策も現状維持を示しました。また改めてテーパリングの議論は時期尚早との認識を示しました。

10-12月期GDPは前回値より大幅減となるも予想通りで4.0%成長となりました。

米国のインフレ指標として重要なPCEコアデフレーターは1.5%となり、若干の物価上昇を示しました。

 

 

【先週の振り返りと考察】~株式市場へと形を変えて噴出する格差への不満~

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先週は米大型ハイテク株の決算で好決算が続くも上値が重く、世界的に株価指数が大幅に下落することになりました。

その大きな原因となったのはゲームストップに代表される低位株に対する個人投資家の集団的で投機的な買い上げと、空売りしていたヘッジファンドの踏み上げによる急騰と急落の乱高下でした。

元々最高値を更新し続け高値圏にあった各国の株価ですが、その投機的な動きはバブルを彷彿させ投資家の不安を煽り下げ幅を加速しました。

 

この投機的な動きの中心にいたのはredditというSNSに集まった投資初心者を中心としたロビンフッダーと呼ばれる個人投資家ですが、米国にある様々な問題を浮き彫りにしました。

一つ目は政治の世界でも大きな潮流となっている格差による分断、二つ目はコロナ禍体側の金融政策や財政政策によるカネ余り、三つ目はSNSによる集団行動への影響力の加速です。

 

今回の買い上げは、カネ余りと投資アプリで武器を得た一般庶民がSNSというリーダーを得て、豊富な資金力で莫大な利益を稼き庶民の敵であるエスタブリッシュメント既得権益層)に対して行なっている挑戦行為であると解釈できます。

根底にあるのは自らの現在の環境に不満を持ちながら、相対するエスタブリッシュメントに対して敵対心を持ち、それらを逆転できる可能性を求めて行動する人々の存在だと思います。

 

これまでは主に政治の世界で見られた存在で、ポピュリストを名乗ったトランプ大統領によって率いられてきました。

しかし、大統領選挙でトランプ大統領が敗北し、自らの環境を変えてくれることが叶わなくなったストレスが、今度は形を変えて株式市場に流れ込んできたのだと考えられます。

 

そしてまた、ロビンフッドなどオンライン証券が講じた取引制限に関して、民主党オカシオコルテス下院議員、共和党クルーズ上院議員が「容認できない」と個人投資家側を擁護する動きを見せています。

両氏は民主党共和党を代表するポピュリストであり、その彼らが庶民である個人投資家に接近してきているのも気になります。

 

この流れを見る限り、米国の格差の下方にいる人々の不満は収まらず、今後も形を変えながらSNSの導きにより突如として噴出し続けるのではないかと思います。

やはり分断の溝は深く、その修復にはベーシックインカム制度などより大胆な富の再分配に踏み切らないと解決に向かわない深い問題だと感じます。

 

今週は個人投資家の投機の流れをどう規制するかに注目されますが、強すぎる規制は株式市場自体のムードを締め付けることとなり、当面好材料が見当たらない中ではさらなる株価の調整を引き起こす可能性が高いと思われます。

 

以上