投資家見習いのブログ

世界の地政学的リスクと経済指標を独自の数値で可視化し、マーケットを語ります。

【2/1-2/5週の世界のリスクと経済指標】~中国海警局の武装化を巡る尖閣、台湾危機の予兆~

先週の評点:

 

リスク   +3点(45点):良化 (基準点42点) 

経済指標  -3点(102点):小幅悪化 (基準点103点)

 

 

【リスク】

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リスクの項目から「香港情勢」を外し、「尖閣/台湾情勢」を追加しました。

 

 先週はプラス3ポイントの良化としました。

COVID-19の新規感染者は明確にピークを超えてきており、米国では一時30万人を超えていた新規感染者数は足元では13万人に減少しています。

変異種が猛威を振るった英国でもピークの30%以下の感染者数まで減少しています。

ロックダウンの効果とワクチン接種の効果が徐々に現れ始めていることが伺えます。

 

また、米バイデン政権が掲げる1.9兆ドルに及ぶ追加経済対策は、その規模に対して共和党の反対にあっていましたが、民主党単独過半数で可決できる財政調整措置をとることに踏み切りました。

これで大規模な経済対策が成立する期待が高まりました。

 

一方で先週は中国が海警法を施行し、海警局にて武器の使用が認められることとなりました。これにより尖閣諸島を巡って中国側の姿勢が強まることとなりました。

これが影響してか、米国が新政権発足後初となる「航行の自由作戦」を実施し、米国艦船が台湾海峡南シナ海を航行しけん制しました。

 

また、ミャンマーで軍部によるクーデターが起こり、民主派政権が打倒され再び軍部が政権を握ることとなりました。ミャンマー自体の経済的な影響は大きくないですが、民主政権が強権的に軍部に打倒されたという事実が、民主主義の弱体化をより強く印象付けることとなりました。

 

 

【経済指標】

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先週はマイナス3ポイントの悪化としました。

中国の財新製造業、サービス部門PMIは両方とも悪化を示し、これまで好調に回復してきた中国の勢いに一旦の落ち着きを示しました。

また、米国のISM景況指数、雇用統計の重要指標がありましたが、こちらもまちまちでした。

ISM製造業景況指数は予想に対して低下、非製造業景況指数は予想、前回値に対して上昇を見せました。

雇用統計は非農業部門雇用者数変化は予想5万人に対して4.9万人とほぼ中立でした。

株価ほど米国の回復を強く示す指標にはなっておらず、引き続きFRB、政府の強い支援を正当化する結果となりました。

 

 

【先週の振り返りと考察】

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先週の株価指数は軒並み大幅上昇となりました。

前週は米国の個人投資家による低位株の買い上げで市場が混乱し株価は大幅に下落しましたが、今週に入りそれも落ち着きを取り戻しました。

米国の追加経済対策を巡って与党民主党単独過半数1.9兆ドルの対策案を可決する方向となり、その期待感から金利が一時1.16%まで上昇しながら、株価も上昇を続けました。

結局先週の大幅下落を取り戻し、米S&P500、ナスダックは最高値を更新しました。

原油先物57ドル台をつけ、昨年2月のコロナショック開始前の水準を取り戻しました。

先週の混乱が長引くかと思っていましたが、予想外に早く落ち着いた印象です。

日米共にハイテク分野、製造業を中心に好調な決算と共に米経済対策期待で市場に再び楽観が戻ってきたような気がします。

 

 

~中国海警局の武装化を巡る尖閣、台湾危機の予兆~

 さて、先週は中国が周辺海域で活動する海警局の権限強化を定めた海警法を施行しました。

領海などに入った外国船が命令に従わない場合、いわゆる警察機関である海警局に軍部同様に武器の使用を認めるとしています。

これにより、尖閣諸島海域において日本の海上保安庁の巡視船や漁船が、中国海警局の船舶によって武力で排除される可能性が高まってきました。

この法律の施行は東シナ海南シナ海の領域において非常に重要な意味を持っています。

 

尖閣諸島は日本にとっては重要な領地でありますが、一方で中国にとっても台湾侵攻に向けた重要な拠点と考えられています。

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上図の通り、中国が台湾侵攻を実行しようとした場合、大陸側より正面から攻める部隊のみならず両翼から攻める部隊が必要になると考えられます。

台湾南方海域は中国の主張に従うと自らの領海であるため利用できますが、北方海域は尖閣諸島の海域に当たり、日本の領海です。この海域を日本が抑えている限りは中国は自由に航行できません。

従って、中国が台湾侵攻を考えた場合、まずは尖閣諸島を自国領地として実効支配し日本を追い出す必要があると考えます。

 

今回の海警局の武器使用許可により、中国はこれまでよりも強い姿勢で日本の海上保安庁に対抗でき、実際の武力行為とは行かないまでも威嚇することによって、武器を持たない海上保安庁はこの海域からの一時撤退を余儀なくされると考えられます。

軍隊ではないためあくまでも警備の一環と主張しつつ、尖閣諸島からの日本の支配力を後退させてその隙に支配下に置いて既成事実を作り、そこを拠点に台湾に侵攻を目論む可能性が高いと思われます。

 

バイデン政権が発足してから、政府高官により尖閣日米安保が適用されるとの方針が明確に示されています。また、ドイツが日本に艦船派遣方針を出したり、日英2プラス2会談にて英空母をアジアに派遣し共同訓練を行う方針となったりと、日本と欧州との連携も相次いでいます。

これらは欧米諸国の対中政策の一環ではありますが、何よりも中国の台湾侵攻を恐れ牽制するものであると考えます。

 

ここ数週間で台湾への半導体生産の過剰な集中から自動車生産などが滞り始め、日独米政府が台湾政府に対して半導体の増産を要請するほどTSMCを中心とした台湾メーカーへの依存が伝えられています。

現在はすべての先端技術に半導体を必要とする時代であり、半導体の供給が滞るとすべての産業が滞ります。

台湾が有事となり、台湾を中国に押さえられると日欧米諸国はスマホから武器に至るまで重要な製品である半導体を握られることなります。

もともと中国にとって台湾は太平洋に進出するための地政学的に重要な拠点でありますが、それに加えて半導体集積地として他国に対する経済、安全保障の面からも、台湾を手中に入れることの重要性が増しています。

 

仮に今回の海警法施行によって中国が尖閣諸島に対して何らかの強い干渉があった場合、そこから台湾侵攻が連想され、マーケットに対しての影響も大きなものとなることが予想されます。

そういう意味で非常に重要な中国政府の政策転換だと考えます。

この中国海警局の動きも注意深くウォッチしていきたいと思います。

 

以上